海浜サナトリウム#2
軍議に必要な資料や筆記具を集め、会議室に向かう途中、急に激しい咳と胸痛が彼を襲った。彼はその場で立ち止まり身を屈めながらこれまでにない息苦しさを感じていた。
と、不意に口内に鉄の味が広がったかと思うと、口から液体が溢れ出てきた。掌で覆っても留まることなく流れ落ち、木造の床に紅の溜まりを作った。
喀血。
彼は暫し呆然とし、その後ひどく狼狽えた。心臓の鼓動が早くなり、瞬時に頭に血流が集中したようだ。しかし何も考えられない。彼は自分の足元にできた血溜まりを凝視していた。血を吐いた。その紛れもない事実が横たわっている。血溜まりは脳裏に焼き付くような赤色をしており、彼の心に大きな衝撃を与えた。この最初の喀血は、彼の今後の生涯において深い闇を根ざすこととなる。
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