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柔らかな朝

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心身の恢復途上の軍人と薬草摘みの魔女のある朝の記録。
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#長編小説

柔らかな朝#3

私たちは、ぽつりぽつりと話したり、あるいは心地よい沈黙を味わいながら、ゆっくりと朝食をとった。
彼が話すのは、森の中でさえずる小鳥の名や、街に品揃えの良い楽譜屋を見つけたこと、私が調剤した頭痛薬が大変によく効いたことなど、他愛のない内容だった。

彼は自分の過去を話そうとしなかった。
森の中で薬草を摘んでいる最中に、全身に深い傷を負い、瀕死の状態で倒れている彼を偶然発見したのが1か月前。身なりから

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