伊勢志摩ミステリー 偽りの黒真珠

 私が初めてプレイしたビデオゲームは覚えている限り、たぶん任天堂のドンキーコング、もしくはドンキーコングのコピー品。もしくはATARIのアステロイドのどれかである。私が小学校に入学する前のような気がしている。
 以来、この記事を書いている今日にいたるまでの約40年間色んなゲームを遊んできた。ここでそれらのゲームを挙げるとキリがないので、またどこかで触れることもあるだろう。

 その中でも、中学生当時から大好きなゲームが2作ある。1つ目はT&E SOFTの「ハイドライド」、もう1つはアスキーがLOGIN SOFTのブランドでリリースした「オホーツクに消ゆ」だ。
 両作とも1984(昭和59)年12月に最初のバージョン(と言うのが正しいのかはわからないが)がパソコン向けにリリースされた。私が実際に遊んだのは1985年になってからであるが(「オホーツクに消ゆ」はもしかしたら1986年かもしれない)、今でも好きなゲームである。この2本について語り出すと又キリがなくなるので今回は割愛。

 2019(平成31)年1月24日、この記事を公開する3日前に「伊勢志摩ミステリー 偽りの黒真珠」というゲームがリリースされた。Nintendo Switch向けのダウンロード専用ゲームで、価格は \1,000(税込)である。販売はフライハイワークス株式会社、開発はハッピーミール株式会社である。元々は2017年にNintendo 3DSでリリース予定であったが、諸事情で延期してしまい、2018年9月にNintendo Switchでリリースすることが発表された。

 どんなゲームかというと、殺人事件を取り扱ったアドベンチャーゲームである。東京・上野で殺人と思われる死体が発見され、ホトケの身元を捜査する上で、担当刑事とその部下は三重県の伊勢志摩地方へと赴く。そして、捜査に従事する中でドラマが展開されるというゲームだ。
 私はこのゲームのリリースを発表以来ずっと待ってきた。このゲーム、何よりも私が好きな「オホーツクに消ゆ」へのリスペクトが込められているからだ。

 上はタイトル画面。

 こちらはゲーム画面。

 上の画面構成を見ると、1987年に発売されたファミコン版「オホーツクに消ゆ」を模倣している。更に、登場人物のキャラクターデザインは荒井清和(荒井画伯)氏。ファミコン版オホーツクに消ゆでキャラクターデザイン等を行った漫画家・イラストレーターの方である。音楽もファミコン独特の広義のPSG音源を再現している。ちなみに、Nintendo Switch上でファミコンをエミュレートしている訳ではないそうで、あくまでも「ファミコン風」だ。

 インターフェイスもコマンド入力方式を採用している。ファミコン版オホーツクに消ゆのような、ゲームの続きを行うためにパスワードを入力するというギミックは無いが、それは今の時代に必要とはされない。HDD/SDカードといった外部記憶装置がゲーム機自体に内蔵されるようになった現在では、単に懐かしさを感じるためのものでしかなくなっている。
 このコマンド入力で新しい要素を持つコマンドとして「スマホつかえ」というコマンドが有り、まさに今の時代に即したものになっている。このコマンドでWeb検索・電話・メッセンジャー・ゲーム(ミニゲーム)などができるようになっている(セーブもこのコマンドで行う)。ただ、スマホは現実世界ではあまりにも万能な力を持つツールであるため、「偽りの黒真珠」のゲーム進行ではその使用を制限されることも多い。ストーリーの進行上適宜使用していく感じになる。

 これはアバンタイトル部分を終わらせると表示される本タイトル。志摩の英虞湾をバックにした画面である。正にこれも「オホーツクに消ゆ」と同じ。「オホーツク」も東京編が終わるとタイトルが流れるが、「偽りの黒真珠」でも全く同じタイミングで本タイトルが表示される。
 まだ発売されて3日しか経っていないので、本編内容に触れることは避けたい。そこに触れてしまうのは私個人としても面白くない。ただ、私が感じるのは開発者達は「オホーツクに消ゆ」をリスペクトしているであろうことだ。そうでなければ、2019年にこんなゲームをリリースしようなどと思わないだろうし、時間と資金を掛けて真面目にこんなゲームを作ろうとは思わないのではないだろうか。

 プレイ時間はクリアまで5~6時間という所だろうか。途中で飽きが来るわけでもなく、のめりこむと延々とやってしまう。ストーリーのクライマックスが近づいてくるとやはり先を見たくなる。リアルタイムの要素は無いのでゆっくりやってもいいし、早解きを目指してもいいかもしれない。でも個人的にはゆっくりストーリーを堪能してほしいと思う。

 ゲーム中にメニューを出して、取扱説明書を表示させると、昔のファミコンのゲームソフトによくあったような説明書が表示される。ここまで徹底している。

 今この時にこんな「オホーツクに消ゆ」へのリスペクトを持ったゲームを出すという事は難儀だなと思う。それは、シナリオを書いた堀井雄二に対するリスペクトであり、堀井雄二に対する挑戦でもあるからだ。このゲームシナリオを書くにあたり、シナリオライターの方に圧し掛かったプレッシャーは想像を絶するほどの凄さだったのではないか、と想像する。今もって名作と言われファンの多い「オホーツクに消ゆ」と比較され、堀井雄二と比較されてしまう。そうなる事は覚悟のうえでそれでも挑戦しているのだ。

 正直このゲームが若い世代にリーチするとは個人的にはあまり思えないが、「オホーツクに消ゆ」が好きならぜひとも遊んでほしい。賛否両論有るかもしれないが、それもまた面白いものだ。私はこのゲーム好きです。

 現在「オホーツクに消ゆ」をプレイした人達が、その舞台となった北海道を訪れるように、このゲームをプレイすることで伊勢志摩を「聖地巡礼」するようになるのだろうな、とも思うのである。
 このゲームのリリースに関わった関係者の方々、お疲れさまでした。そして、リリースしてくれてありがとうございました。


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