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タンザニアでAmazonは使えない?EC普及の現状と今後の見通し
日本では今や当たり前となっているEC(ネット販売・オンラインショッピングのこと、電子商取引とも呼ばれる)。
BtoCでも、2021年は国内で年間13兆円を超える取引が発生しています。しかし、これだけ浸透しているにもかかわらず、日本国内のEC化率は8.78%。アメリカでは13%、中国では44%を超えているのとは対照的です。これは、国土の広さやプラットフォームが充実していることも関係していると考えられます。
インターネットとスマートフォンの普及により、ECは世界中で急速に拡大していますが、同じく国土が広いアフリカ、そしてタンザニアにおいてもその波は訪れているのでしょうか。本記事では、主にタンザニアでのECの利用状況、普及への課題、そして今後の見通しについて詳しく探っていきます。
参考:令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)(経済産業省)
世界のEC市場の規模・普及率
世界の個人向けEC市場の規模は、2021年時点で約5兆ドル弱、EC化率は20%弱と推計されています。世界的な新型コロナウイルス感染症拡大を背景に、ECの需要が増加したことが背景ですが、以後も拡大を続けており、2025年には市場規模は約7.4兆ドル、EC化率は24.5%にまで上昇すると予測されています。
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市場規模は圧倒的に中国が大きく、全体の50%強を中国が占めている状況です。次点でアメリカ、イギリス、日本と続きます。
アフリカ全体においても、EC市場は伸びており、2017年には165億ドル、2020年には198億ドルの規模と推計されています。日本やアメリカなどと比べると、まだまだ数分の一程度の規模ですが、ユーザー総数は2億8,100万人に達し、ユーザー普及率は24%になる見込みと、今後の可能性を大きく秘める市場です。
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しかし、上記の地図からもわかるように、タンザニアでは隣国のケニアやエジプト、ナイジェリアと比較しても、あまりECが普及しているようには思えません。これには、どのような背景があるのでしょうか?
参考:アフリカのEコマース市場(総論)(日本貿易振興機構 ナイロビ事務所)
タンザニアのEC市場の現状 ECはみんな使わない?
2022年の初めの時点で、タンザニアにおける携帯電話の接続数は5,381万件でした。世界銀行のデータによれば、2022年時点のタンザニアの人口が6,550万人なので、この契約件数は全体の80%を超えており、驚くべき数といえます。
近年、生産の増加にともない携帯電話の価格が低下しているため、世界中の多くの人が複数のモバイル接続を利用しています。そのため、1人の人が個人用、仕事用に一台ずつ携帯電話を持っていることはタンザニアでも珍しくありません。
特に都市部に住む若者のほとんどが一人一台携帯電話を保有しており、InstagramやFacebook、WhatsappなどのSNSを頻繁に利用しています。
その一方、ECに関してはまだまだ普及していません。タンザニアの大半の人が、普通は店舗で商品を購入しますが、オンラインで購入する際は、ソーシャルメディアのページを通じて行われるケースが多いです。特にInstagramやTiktokなどが多く、そこで事業者が商品やサービスを投稿し、関心を持った顧客が事業者に連絡して配送を依頼します。日本の楽天やAmazonのようなマーケットプレイスで日用品や服などを購入するという体験は、まだまだ一般的ではありません。
ほとんどの場合、支払いは現金の代金引換、もしくは電子マネーで行われます。これは、タンザニアではクレジットカードがほとんど浸透していないことが背景にあります。ある調査によると、タンザニアの人口のわずか0.7%の人しかクレジットカードを所有しておらず、都市部でも利用できるところは、外国人観光客や富裕層が利用する店舗に限られます。
また、ECを利用する場合でも、タンザニアではオンラインでの決済をなるべく避ける傾向にあります。「品物が届くまで品質が担保されているかわからない」「ちゃんと指定した住所に商品が届くかわからない」という理由で、ECを利用する人の94%が支払い方法で代金引換を選択し、無料返品オプションを好むといいます。
そもそもタンザニアをはじめとするアフリカでは、住所は通りの名前までしか決まっていないということはよくあり、日本のように家の戸口の前まで配達するということは非常に難しくなっています。都市部以外では、物流網が発達しておらず、バイクや徒歩でしか行けない場所などもまだ多く存在しており、ECが普及するにはこうしたインフラの整備も重要な課題です。
参考:Tanzania: Buying and Selling(LLOYDS BANK)
参考:Tanzania Country Comercial Guide - eCommerce(International Trade Administration)
タンザニアで使われているECってある?
そうは言っても、タンザニアで利用されているECマーケットプレイスも徐々に誕生しています。
KiKUU
KiKUUは2015年に設立された越境ECのマーケットプレイスです。タンザニアだけでなく、アフリカ全土にある16カ国以上の国、南米やヨーロッパからも利用できるようになっていおり、アフリカをメインの市場としていますが、実際は中国発の会社です。マーケットプレイスには、販売者として登録するための導線もありますが、このページは中国語で表記されており、販売されている商品も中国から仕入れているものが大半ではないかと思われます。
KiKUUは、アフリカ各地で物流拠点もカバーしており、ECでの注文から顧客への配送まで対応可能としています。また、顧客とのやり取りでは、タンザニアでよく使われているメッセージアプリであるWhatsappも使用しています。
売られている商品は、携帯電話やその関連グッズ、また女性向けの衣服や小物などのファッショングッズが主力です。
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参考:https://www.kikuu.co.tz/
Jumia
Jumiaはナイジェリア発のECマーケットプレイスで、物流サービス、決済サービスも提供しています。Jumiaはアフリカ大陸発のスタートアップとしては、初めてユニコーンになった企業で、2019年にニューヨーク証券取引所に上場しています。
現在はアフリカの13を超える地域で展開しており、毎月1,500万人のユーザーが訪れる、アフリカにおけるAmazon的な存在になっています。また、Jumiaのマーケットプレイスに登録している企業は、コートジボワールで3分の1以上、ケニアとナイジェリアで半分以上が女性が立ち上げた会社になっており、女性の社会進出の一助になっていることが伺えます。
実は、Jumiaのタンザニアにおける拠点は2019年に撤退してしまっていますが、タンザニアでのEC市場の発展によっては再進出もありえるかもしれません。
販売されている商品は、携帯電話や家電製品、男性向けのスニーカーなどが特徴的です。以前は食品の配達も行っていましたが、こちらは直近多くの市場から撤退しています。
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参考:https://group.jumia.com/
Zudua
Zuduaはタンザニア発のECマーケットプレイスです。Trading Technologies Tanzania Limitedという会社によって運営されているようですが、この会社の情報はインターネット上ではほとんど出てきません。
ファウンダーや働いている方はアラブ系の方が多いので、UAEなどタンザニアと関係性の深い国とのつながりがあるのかもしれません。
このサイトでも女性向けのファッショングッズ、携帯電話製品などが多く売られていますが、特に日本のHITACHIの冷蔵庫や洗濯機などが大きくクローズアップされており、人気ぶりが伺えます。
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参考:https://zudua.co.tz/
Shop Online Tanzania
Shop Online Tanzaniaも、タンザニア発のECマーケットプレイスです。SL Shoponline Tanzania Limitedという会社が運営しています。
特徴的なのは、ソーラーパネル発電のバッテリーを主力商品として販売していることです。タンザニアでは電力が安定していなかったり、電気が通っていない地域も多く、急速にソーラーパネルが普及しています。また、防犯カメラやココナッツオイルなどの専門カテゴリも存在しており、タンザニアに住む人のローカルインサイトに基づいた品揃えがされていることがわかります。
![](https://assets.st-note.com/img/1722131921627-lFT0CXJeLk.png?width=1200)
参考:https://www.shoponline.co.tz/
今後タンザニアでECは普及するのか?
EC市場は、世界的に急速な成長を遂げており、今後タンザニアでも成長していくことは間違いないと言えるでしょう。一方で、先に上げたような配達システムやインフラが未整備であること、支払いシステムが不十分であることなどの課題も多く存在します。
こうした課題を解決するため、すでに取り組みを開始している企業も存在します。日本企業で言えば、ヤマハ発動機の子会社・クーリエメイトが2023年末にタンザニアでも事業を開始し、バイクによる配送会社が設立されました。タンザニアでは詳細な住所がある場所のほうが少ないため、一度配送した場所をシステムに登録して今後の配送をしやすくしたり、電話などで場所を教えてもらって配送するなどの工夫を行っています。
また、現在では代金引換が主流のため、紛失などを防ぐために荷物や代金の流れをシステムで確認できるようにしているといいます。
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こうした物流の整備が進むことで、今後さらにタンザニアにおけるEC市場も拡大していくのではないでしょうか。
タンザニアは治安も安定し、資源も豊富ですが、日本企業の進出はまだまだ多くありません。ぜひこの機会を逃さず、検討してみるのはいかがでしょうか。
LINDA PESAでは、タンザニアや東アフリカ諸国に進出したい日本企業のご相談も承っています。お気軽にお問い合わせください!
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LINDA PESA株式会社
Email:info@lindapesa.com
URL:https://www.lindapesa-ltd.com/
[ライター紹介]
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上杉 桃子(Momoko Uesugi)
大阪大学外国語学部卒。2019年に株式会社ZUUに新卒で入社、大手企業のオウンドメディアのコンサルタントとして従事した後、経営企画に異動。IR、M&A、海外子会社マネジメント等の全社プロジェクトに関わる。また、他社との共同メディアの運営統括として子会社のジョイントベンチャーで取締役を務める。その後、UPSIDERに入社し、マーケティング責任者としてマスマーケティングからデジタルまで幅広く管掌。現在は、東京大学大学院国際協力学専攻にてタンザニアにおけるマイクロファイナンスの研究に取り組む。