カヌレの思い出
最近はカヌレがプチブームらしい?私は流行に疎いのであまり詳しくはないが、どこかの記事で見かけるようになったように思える。
私が初めてカヌレというお菓子の存在を知ったのは確か高校生の頃だった。
その頃に買い始めた「ハクメイとミコチ」という漫画のとある1話にカヌレが出てきたのだ。
登場人物たちはカヌレというものを知っているようで、とんとんと話が進んでいく。私はカヌレなんて知らないから、何物かとよくわかっていなかった。登場人物たちのセリフからお菓子であるということはわかった。
出てきたカヌレの絵は、黒い外見と円錐のような形で山に似ていると思った。
そして作中では、丁寧にカヌレの作り方を描いていて、美味しそうにカヌレを食べている。
曰く外はカリカリ、中はもちもちらしい。
「カヌレってどんなお菓子なんだ?!」
私はもともと食い意地が張っており、好きな漫画に出てきた未知のお菓子カヌレに対する興味が俄然と湧いた。
しかしこの頃はカヌレというお菓子がどこで買えるのか知らなかった、というより売っていなかった。ケーキ屋でも見かけず、もちろんコンビニでも売っていない。
私の中でカヌレは幻のお菓子になっていた。
そしてしばらく経ったある日。母がよく買うパン屋について行ったところ、例の黒いマウンテン、なんとカヌレが置いてあったのだ。
私はとても衝撃を受けた。漫画の中ではない、現実のお菓子であり実在したのだということを。
母も「ハクメイとミコチ」を読んでいたため、カヌレという存在に興味津々だった。
そしてイートインスペースにて、私は母にカヌレをご馳走になった。
店員さんが温めて持ってきたカヌレを、私は写真におさめた。意外と小さいものだと、思った。
どこから食べたらよいのかわからなかったが、がぶっと食べてみる。
外は焦げているようなかたさだが苦くはなく、中はもちもちというよりカスタードの小麦多めのような少しとろっとした食感。
そうか、これがカヌレか。私は感激して泣いた。憧れていたカヌレを食べられた嬉しさが感極まったのだ。
食べ物を食べて泣いたことは初めてだった。他の人がいるにも関わらず、涙がぼろぼろと溢れたのだ。
そして私は大学生になった。
授業の課題として、自分の好きなものをウェブサイトという形で紹介することになった。
私は肉と甘いものが好きであり、スマホの写真にたくさんの肉とお菓子の写真があったため、「肉と糖」というサイトを作った。今思うと、欲望に忠実なテーマだったと思う。
そのサイトの中では、かつて私を感涙させたカヌレについても記載した。カヌレについては、一連の話があったため良い話題になると踏んでいた。
作ったサイトを発表をする日。
「私は肉と甘いものが好きで、自分で作ったりもしていて〜」など紹介していく。肉とお菓子の写真のみでカロリーの高いサイトだ。
そしてカヌレの話になった。
「とある漫画に出てきて、食べてみたら感動しました」というような話をし、
「その漫画って、「四月は君の嘘」?」と、最後に教師に聞かれた。
私は固まった。私はその漫画を読んだことはなかったのだ。
しかも周りの学生たちも「そうそう」といった表情だ。「四月は君の嘘」にカヌレが出てくる方が一般的だったのか・・・。私はカルチャーショックを受ける。
「「ハクメイとミコチ」という漫画です」と私は答える。
「知らないな〜」と小首を傾げられてしまった。
そして私の発表は無事に終了した。
そんなカヌレの思い出。