三船さん
わたしには、そんなに一緒に居たいだなんてわからないよ。
三船さんは、
「今度 世界がクッキリする時は
はじめに見えたものを好きになろうって決めた」
って言ったけど、
ぼくはずっと、教室で見たきみのことがいちばんくっきり、見えてるよ。いつまでも。
君が意味もなく会いに行ってたひとに会うとき、ぼくもきみに会えた。
ラブレターだって、ロッカーに貼るんだって。私がきみにあげた手紙とかもう忘れたかな。
ぼくは、ブンちゃんに似ていて
大切なひとのことを苗字にさん付けで呼んでた。
大切にしたかったから。
大事にしたくて、ずっととっておいた。
髪が伸びて、どんどん知らなくなって、どこかで働いているところが、ずっと好きだな。
もうたくさんだし、全然死んだって構わないし、どうせこの世に心の居場所も、思い出以上に大切なものなんてないんだから、と私も出家しようとしてたことあるし。
6月が終わりそうになると、カレンダーに見えない丸が見える。
替えなんて効かないんだよ。
きみは女の子を好きなわけじゃないし、
眩しい眩しいあの一瞬はもう一生来ないんだよ。
ブンちゃん。
悪霊になって、どうか運命を変えてよ。
いつか戻れたらあのときにちゃんと戻る。
戻った世界で新しい私が、いちばんはじめに見えるのは君だよ。
どうか。幸せになってね。
許せるよ。
許さない。
きみがほかの誰かと幸せになるなんて許さないよ。
あなたのお墓参りに行く度に、あの日の昼休みを思い出すんだよ。
私は死んだら悪霊になる。
ブンちゃん、ひとりで変わっていかないでよ。