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愛するふるさとの歴史を知ったあの日~ちょっとよりみち

リンピオユキトのある鳥取県西部、昔は伯耆の国と呼ばれていました。
そこは、大昔、一大製鉄地帯だったようです。
鉄づくりとは言っても、いま行われているような重工業の製鉄所ではなく、日本古来の手作業のたたらと呼ばれる鉄づくりです。もののけ姫の鉄づくりといえば、おわかりになる人もあるかもしれません。
伯耆、出雲は真砂砂鉄と呼ばれる砂鉄が採れたため、砂鉄を使って鉄を作り日本中に供給していたのです。
江戸時代のピーク時には、日本産鉄の90%が中国地方で作られていたと伝わります。

日本で鉄を作り始めたのはいつ頃からか、考古学者の間でも長らく議論の的となっています。
製鉄遺跡自体は古墳時代、5世紀頃のものがあちこちで見つかっています。
出雲神話では、須佐鳴尊(スサノウノミコト)が、八岐大蛇から天の叢雲野剣(アメノムラクモノツルギ)を取り出し、天照大神(アマテラスオオミカミ)に献上したという話が有名で、天の叢雲野剣は今でも天皇家の三種の神器の一つになっています。
天皇陛下が交代されるたびに儀式が行われ、そのときに付き添いのおっちゃんが剣を捧げて恭しく歩いているのを見たことがあるでしょう。見たことがない?では次の儀式のときはしっかり見ておくのですよ。
須佐鳴尊のおはなしは、単に作り話ではありません。天の叢雲野剣という物証があるのですから(おそらく)
話が飛びました。
その剣は、たたらによって作られた剣だとする説があります。
奇しくも八岐大蛇伝説の場所は、船通山。奥日野と奥出雲を分ける分水嶺であります。(要は山のてっぺんってことね)
そこから流れ出る川は斐伊川と日野川。須佐王はヒノカワを遡って八岐大蛇の住処に辿り着いたと言いう出雲国風土記から、またしても斐伊川説と日野川説がありますが、この際それはどうでもよろしい。
天叢雲野剣を分析すれば色々とわかるんでしょうが、天皇家の秘宝になってることから、科学的分析ができなくって、痒いところに手が届かない状態になっているのですよ。天皇の持ち物は恐れ多くて勝手に分析などできませんからね。
兎に角そんな昔から、たたらと呼ばれる鉄づくりが行われていたってことです。

さらに平安時代には鳥取県側で、その鋼を使った刀造りが盛んになります。(鉄の中で、炭素分が1~2%のものは、刃物造りに向いていることから鋼=刃金と呼びます)
その刀鍛冶の中に、ひときわすぐれた匠が生まれました。
大原安綱という人です。
この人が源頼光の『童子切』とか、渡辺綱の『鬼切』とか、平忠盛の『抜丸』とかの名刀を造りました。当時からめちゃめちゃ高価な刀だったようで、江戸時代には徳川家などに代々残されてきて、いまでも国宝などになっています。ちゃんと刀の柄に安綱と銘が刻んであるので間違いありません。日本刀の黎明期です。
大江山の酒呑童子のお話は、室町御伽草子に伝わっていますが、単に作り話ではありません。伝説の童子切の刀が、東京国立博物館で国宝になっているのですから。
ご当地自慢になってしまいましたが、リンピオの里はそんなところです。

ちなみに、たたらによる鉄づくりは、大正時代に終了しています。
砂鉄を山から掘り出し、木を伐って炭を作り、三日三晩火を焚いて鉄にするという膨大な労力で、少量の和鉄を作るという作業は今の時代の流れについていけなかったのですね。
そしてたたらの歴史は、いつしか時の彼方へ埋もれてしまいました。


ふる里の歴史という玉手箱を開けてしまった私
たたらのことなど知らなかった私は、15年ほど前、たたらの操業家だったという家系の人から、昔話としてそれを教えられました。
そして面白半分から調査する作業を始めました。
山の中に入るとあちこちに遺跡が残っています。

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突然山の中に壮大な遺跡があらわれ、興奮しました。
言い出しっぺの勢いで「伯耆国たたら顕彰会」を結成し、私が初代会長になりました。
出版物を読み漁って知識を深め、古文書や伝承も調査しました。
多くの研究者もお招きして講演をしていただきました。
ホームページを作り、ブログでの発信を始めます。
そして、気が付けば後援者は100人を超えていました。
調査した遺跡は300を超え、都合山という遺跡は鳥取県指定文化財になりました。

時の彼方に置き去りにされ忘れ去られていた、たたらの歴史は再び光をあてられ、語り継がれてゆくことになりそうです。

私が守ろうとしているのは、奥日野地方のたたらの歴史ですが、こういった郷土が誇る歴史は、どこの地域にもあると思います。
時が過ぎ、地域の人が少なくなって、忘れ去られてしまう貴重な歴史。
これをなくしてしまってはいけません。
失ってしまったら、後世で二度と知ることができないものも多くあります。
わたしは奥日野に生息しながら、このふるさとを大事に守って行こうと、ちっちゃな人間にしては、崇高な思いを抱いているのでありました。

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