恋猫と|#シロクマ文芸部(約900字)
恋猫と一緒にいる。本当は家に入れて愛でたいけれど、それはその猫が望まない。もしかしたら誰かの愛猫なのかもしれない。
◇
ある日、机の前の窓の向こうに、その猫はいた。この窓は二階、一瞬『えっ?どうやって…』と思ったが、猫にしてみれば屋根の上を歩くなんて造作もないことだろう。その猫は、珍しいものでも見るように、窓の向こうから自分を眺めていた。
あまりにも熱心にこちらを見るので、中に入りたいのかと思い窓を開けたら、パッと離れたが… また窓の向こうに立ちこちらを見る。
「中に入らないの?」
猫に話しかけても答えるはずもない。『何言ってんの?コイツ』みたいな顔をして、まるで動物園で檻の中のライオンでも観ているかのような態度だ。そうか… その猫からみたら、自分は檻の中の動物みたいな存在なのかもしれない。見飽きたのか、また突然プイッと居なくなってしまった。
その猫は、時々『今日もいるかな』みたいに訪れる。窓が開いていても決して中には入らない。黙って窓の向こう側から、本を読む自分やお菓子をつまむ自分を『へぇ〜』という目で観て、飽きると居なくなる。
顔のところだけ三毛猫で、体は白、しっぽの先だけちょっと三毛。あの猫はけっこう美猫だと思う。雄なのか雌なのかわからないけれど、きっとモテるだろうなと思う。
実は最近、あの猫のことを元に小説を書いている。芥川龍之介再来!と思われるような作品にしたいが、オマージュにもならない駄作だとは思うけれど書いている。
この間、いつものように窓際に来たあの猫に少しだけ読み聞かせたら、よっぽどつまらなかったのかすぐに屋根を駈けって行ってしまった。書くのは…辞めようかな。
◇
ある日、あの猫はトラ猫も連れてきた。
『ほら、コレが例のおかしな生き物だよ』
『本当だ。頭が悪そう』
事前にそんな会話でもしたかのように、二匹で自分のことを珍しげに窓の外から眺めている。
『今日もつまらないものを書いているな』
『馬鹿が感染るかもしれないから帰ろう』
「ニャ〜」という声と共に窓辺から去り、向かいの屋根の上で楽しそうにゴロゴロ戯れはじめた。
あぁ、僕のあの猫を取らないで!
トラ猫にヤキモチを焼いている自分は… もう猫になっているのかもしれない。
『恋は猫』がお題だったこともあるなぁ…と
思い出しながら描きました。