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#10 小説『ギフテッド』:自身の幼少期を振り返り、当時の親の想いを知る。
知能検査後の数ヶ月の間は、それまで知らなかった自分の特性を理解するために、何十冊もの本を読んだ。
藤野恵美さんの『ギフテッド』はその中の一冊。
当時読んだ中で唯一の小説だ。
(本の紹介については、本屋大賞の高頭佐和子さんの紹介がわかりやすいと思うので、ぜひこちらを参考に。)
とにかくギフテッドについてどんな情報も欲していた当時の私には、小説の中でギフテッドの子供がどんなふうに描かれているのか興味があった。
また、その本が1年前(当時)の2022年に発売されたばかりだったことも、その本に手を伸ばした理由だった。ただでさえ偏見や誤解が渦巻くギフテッド界隈。ベストセラーだからこそ、きちんと2022年当時のギフテッド情報を用いた状態で書かれているかどうかは、私にとってはとても重要だったからだ。
ギフテッド児を持つ親の手記やエッセイはよく目にするようになったが、別の視点からはギフテッドはどう映り語られるのだろうという点にも興味があった。
今でもメディアやネットのギフテッドや高IQ者に関する情報は、個人的には9割以上は的外れだと感じており、そのほとんどは当事者以外の人が勝手なイメージや思い込みで書いているように感じる。ネットやメディアに溢れる「ギフテッド=天才児」的な昔からのイメージを引きずったままの一辺倒な表現やキャラクター設定ではない、もっと現実に近いそのままの人物像が描かれていることを切に願いながら読み進めた。
読了後の私個人の感想としては、しっかりとアップデートされたギフテッドのリアルが書かれていると感じた。
ギフテッドであるという自覚や、そもそもそんな言葉もなかった状態で子供時代を過ごした凛子が、姪っ子でギフテッドであろう莉緒のとの関わり合いの中で自分の過去に向き合い生き方を見つめ直していく内容。
大人のギフテッドが過去と向き合いかつての自分と統合をしていく姿や、同じくギフテッドであろう姪の様子を第三者として眺め理解していく様子は、とても興味深いものだった。自分の子供時代に、こんな大人が身近にいてくれたら…と思わずにはいられなかった。
「賢い子供に生まれたって、強く生きられるわけじゃない。」
「賢い子供を産んだって、簡単には育てられない。」
これは、本の帯に書かれている言葉だ。
もうこの言葉(一行目)だけで泣ける。
ギフテッド児の描かれ方に興味を持って読み始めたが、この本には私と両親との関係を理解するヒントが描かれていた。
ある文章から、母とのかつてのやりとりとその後の関係性がありありと思い出された。
(次回に続く☺︎)