バイクのすり抜け走行について
私はバイクに乗る人間です。
50cc原付、125ccスクーターPCX、中型バイクGB350と乗り継いできました。
休日のツーリングのほかに毎日の通勤でもバイクを使っているのですが、長年気になっているのが走ってる車のそばをすり抜けていくバイクの存在です。特に通勤・退勤時間帯のラッシュ時に多く見られます。
最初にお断りしておきますが、私はすり抜けをしない派の人間です。
言葉は悪いですが、ものすごく正直にハッキリ書いてしまうと、すり抜けするバイク乗りはバカだと思ってます。
ご気分を害されたら申し訳ありません。でも本音を言ってしまうと、スイスイ流れてる道路ですり抜けしてるバイクを見ると「バカだなぁ」と思ってます。
だって考えてみてください。
道路を走ってる車のドライバー、本当にみんながみんな揃ってバッチリ万全の安全運転をしてると思いますか?
ぼーっとしてただただ漫然と運転してる人。
スマホをチラチラと脇見運転してる人。
見えにくい目、動きにくい手足を使い運転してる高齢者。
見知らぬ土地でナビや看板ばかりに注目しちゃって、左右や後方なんてろくに見ずに運転してる人。
ウトウトと居眠り運転してる人。
行動の直前までウインカーを出さないような運転をしてる人。
もしかしたら、飲酒運転の人もいたりするかも……?
公道って、残念ですがそんなドライバーがどこにいても不思議じゃない場所です。
自分自身が車を運転する時でさえ、周りにそういうドライバーがいるかもしれないと用心して運転しなきゃいけないんです。
ましてや車から見落とされやすく、事故があった場合は簡単に怪我や死亡に直結してしまうバイクでリスクの高いすり抜けをする人の意味が分からないんですよね。
すり抜けようとしてる車のドライバーはバイクの存在に気付いてくれてますか?本当に??すり抜けるたびに各ドライバーとハンドサインでも交わして確認してるんでしょうか???
分かりますよ、すり抜けすればストレスなくスイスイ前に進めて快適ですよね。
でも何台か車を抜かすことができて数秒〜数分早く目的地に着けるというショボいリターンのために、あまりにも高いリスクを払いすぎでしょと。リスクとリターンのバランスがどう見ても明らかに釣り合ってないのになんでやるの、と。不思議で仕方ないです。
“すり抜けするバイク乗りは結構なバカ”と最初に書きましたが、バカと言ってもそのパターンは次の二つに分けられると考えています。
ひとつは、とにかく何も考えてないバカ。
そもそもすり抜けが危険かどうかという発想にも至ってない人。
「この走り方をしたらもしかしたら危ないかな……?」という想像力を働かせることができず、ただただアクセルを開けたまま爆走することしかできない単純思考の人です。
危険を予測して回避するという基本的なリスク管理能力が極端に低いんだろうと思います。
もうひとつは、脳内お花畑で能天気なお人好しバカ。
周囲のドライバーに全幅の信頼を寄せることができて(つまり、周りのドライバーはみんな自分の存在に気づいてくれてるはずだし変な運転なんてするはずがないんだと何故か信じ切ることができて)、何の根拠もないのにこのすり抜けは安全だという自信を持てるある意味ハッピーな人です。
路上って、飛び出しがあるかもしれないとか、すぐそばの車が急に左折をしてくるかもしれないとか、ネガティブな方に考えて対策する(いわゆる“かもしれない運転”)ことが必要なんですが、彼ら彼女らは常に飛び出しなんてない、ドライバーはみんな安全運転、路上状況は常に私の思う通りに流れてる、と言った風にポジティブに考えられるようです。その根拠は何なのか一度訊いてみたいところです。
今はとても便利な時代でして、YouTubeで“ドラレコ 事故”とかのキーワードを入れて検索すれば、そんなお気楽思考が吹っ飛ぶような動画がいくらでも見れる時代なんですが……そういう人は多分見たことないんでしょうね。
二パターンに分けられるとは言ったものの、書いているうちにどっちも同じじゃねぇかと思い始めてしまいました。
要するに、公道上に潜んでいる可能性のある危険を考慮して安全マージンを確保し運転するという意識がない人なんですよね。
すり抜け自体は道交法に違反してないんだから文句を言われる筋合いはないんだ、という反論をする人もいます。
ある意味正論なのかもしれませんが、法に書いてなければ何をしてもいいのかというと私はそうは思わないです。
今でこそバイクに乗る時はヘルメットを着用するのが法で決まってるから当たり前という状況ですが、調べてみたところ着用が完全に義務化されたのは51cc以上のバイクの場合は1978年、50cc原付に至っては1986年のようです。それまではヘルメットを着用しなくても法律的にはOKだったんです。
ではなぜ義務になったかというと、ヘルメット未着用でバイク事故を起こし死ぬ人が多く「これは危険だ」という国の判断が下されたからでしょう。
法で禁止されてないことなら何をしても安全というわけではないんです。法で禁止されてなくても危険な行為は沢山あって、それが社会問題として顕在化した時に初めて法で規制されるんです。法は後追いなんです。
そして“法で禁止されていないが危険な行為”の最たるものが私はすり抜けだと思ってます。
もしすり抜けによる事故が多発して「これは危険だ」と国が判断したら、その時は道交法ですり抜けに関して厳格に定められて、それ以降は違反扱いをされることになるでしょう。
翻って、我々バイク乗りが公道を走る時に本当に心掛けないといけないことは何かと考えた時、それは「自分にとっても他人にとっても安全な運転をすること」のはずです。
“違反をしないこと”は目的ではありません。それは本来、安全を確保するための最低限の手段のはずです。
そう考えると、違反じゃないからすり抜けOKというのはあまりにも短絡的で思慮が足りず、手段と目的を履き違えた残念な主張のように見えてなりません。
もしここまで読んだ上で「将来の道交法改正のために自分の身を犠牲にして礎になりたいぜ、バイクは今よりギチギチの規制だらけの乗り物になってほしいぜ」と思うバイク乗りさんがいましたら、そういう方はどうぞ今後もバンバンすり抜けを続けてください。
私は自分の身が可愛いですし、今後もずっと五体満足で楽しくバイクに乗り続けたいので、すり抜けは引き続き遠慮しておきます。
ここまでお読みいただいた方はお分かりかと思いますが、最後に念のため補足しておくと、全てのすり抜けを例外なく絶対にダメだと言うつもりはありません。
例えば見通しがよく、中央分離帯が存在し、交差点がなく、車が左折するような道路や店舗などが道路左側に全く存在していないというような場面で、停止している車の横をすり抜ける……というような、極めて事故リスクが低いシチュエーションで行うすり抜けに限っては非難すべきものではないと思ってます。
最後尾で信号待ちしてるところに後ろから居眠りの車が突っ込んできてペシャンコ……というリスクを避けるという観点で言えば、停車中の車の前に出て行くのは一定の合理性があると思います。
もちろん、その場合であっても路面状況が悪くてバランスを崩し車と接触するとか、急に助手席側のドアが開いて衝突するなどのリスクが存在することを認識し、対策する必要があることは言うまでもありませんが。
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