いつもとは、ちがう

黒いタートルネックが似合わない季節が来た

家の中の空気は生温かく、私の眠気を誘う

虫たちは新たに誕生し活動を始めた様子で

隣の家の庭には、赤いチューリップが煌々と咲き誇る

その姿はまるで、人間の戸惑いやため息を知らんぷりしているみたい

私自身、「好きな季節は？」と聞かれると即答できるくらい

今の時期が好きだ

外に出れば温かく、太陽が私を迎え入れているようで

花も咲き誇り、視界がカラフルになるこの季節

でも今年だけは明らかに様子が違う

怒り、悲しみ、戸惑い、心配

そんな本来在るべきはずの感情とは真逆のものが

例年より人々の中に多くあり

ニュースでは日ごとに何人が煩っているのか

連日アナウンサーが伝えている

昨日車の中から、今年初めての桜を見た

とても綺麗だった

光を纏いながら咲くその姿は

「ただ毎年のことだから、今ここにいるんだよ」

と言わんばかりに揺れる

今年は貴方の下に座って、誰かと談笑することはできない

私のこころは2月あたりに取り残されたままで

未だに、まるで壮大なSF映画を見ている気分で

この季節が好きなはずなのに

何もなかった時期に戻りたいと

心の奥で願っている

来年はこんな思いはしないように

桜の下でピクニックができるように

暗い感情じゃなく明るい感情で満たせられるように

今はただ祈るばかり