予定になかった懺悔
ゴキブリと蚊以外の虫の命は、なるべく奪わないようにしている。
今だって、部屋の中に迷い込んだ小さなアリを外に逃がした。直で触れるのは嫌なのでティッシュ越しにふんわりと掴み、窓の外に放り投げた。
……書きながら思ったのだけど、アリって転落死するんだろうか。しなそうな気がするけど。
私の部屋は、戸建ての2階にある。少し切り立ったような場所に位置しているから、地面との距離でいうと3階建てくらいの高さだ。真下はコンクリートでできた階段である。
だけどこれがもし私(人間)だったら、犬だったら、ハムスターだったら、ラマだったら、オオアリクイだったら……たぶん死ぬよなぁ。着地の得意なネコ科であっても、地面に段差があるので難しい気がする。
そう考えると、アリであれば死なないという理屈は説明できない。体重が軽ければショックも少ないのか? いや、しかし……。
私はアリの命を見逃してやったつもりで、実は殺してしまったのかもしれない。
予定が狂った。『蜘蛛の糸』の理屈で言うのであれば、今までにかなりの数の虫の命を見逃す、あるいは救ってきた私は、地獄に堕ちたとて天上に舞い戻れる可能性が高いという話をしたかったのだ。糸どころかハンモックに乗って、アリにマッサージでもしてもらいながら快適に連れ出してもらえると語りたかったのに。
私の終活についても、穴があったらしい。あと80年くらいの余生では、もう少し丁寧に虫さんを救っていこう。目下、まずはアリ殺しの罪を償っていかねば。
天国への道のりは長い。やることも多い。
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