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ラストノートに恋をした
私の好きな人の香りは
ほのかに甘いバニラの香り。
だけど私は知っている。
これが香水のラストノートだって。
私はトップもミドルも知らない。
つけたての香りも日中の香りも何も知らない。
私が知っているのは
仕事が終わって少し疲れた顔で
情けなく笑う顔とラストノートの
甘いバニラの香りだけ。
それでもいいと思った。
会えるならそれでいいと。
だけど日毎私の想いは変わった。
つけたてだって 日中の凛々しい顔だって
本当は見たい。
だけど言い出せなかった。
困るあなたの顔が浮かんでいたから。
筆をおく。あなたに初めての手紙。
便箋の裏側に香水をひと吹き。
いつでも私を思い出せるように。
願いを込めて。
甘酸っぱいラズベリーの香り。
私の使う香水。
次にあなたが私を見た時
なんて言うんだろう。
ラストノートのあなたに恋をした。
─Fin.─