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オーラル・ヒストリーの起源を問う


アメリカにおける起源とは?

オーラル・ヒストリーという学問分野がアメリカで確立されたのは、一般的にはアラン・ネヴィンズ(Allan Nevins)がコロンビア大学にオーラル・ヒストリーのリサーチオフィスを立ち上げた1948年だとされる。

ネヴィンズは、歴史家であり南北戦争に関する書籍などを出版。のちにピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストでもあった。彼は、政治家など公的な立場にある「エリート」たちの記憶を多く保存した。

コロンビア大学のホームページより

https://c250.columbia.edu/images/c250_celebrates/remarkable_columbians/240x240_bio_a_nevins.jpg

アメリカにおけるオーラル・ヒストリーの「創設の地」とも言えるコロンビア大学。そこにある修士課程のプログラムであれば、当然、ネヴィンズの理念が少なからず尊重されているものと思っていた。

しかし、オリエンテーションまでに読むべきとされた課題図書は、見事にそのような期待を裏切った。「ネヴィンズは、私のおじいちゃんではない」というタイトル。つまり、オーラル・ヒストリーの起源は別にあるというのだ。

オーラル・ヒストリーとは何か?誰の記憶を保存していくのか?何のために伝承するのか?単純にインタビューの手法や技術を学ぶプログラムではないことを再認識させられた。

最初の課題図書は、
“Allan Nevins Is Not My Grandfather: The Roots of Radical Oral History Practice in the United States”(Daniel R. Kerr 著)

ラディカルって何?

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