
「記憶」の意味づけ
ある出来事に対して話し手が意味づけを行う。オーラル・ヒストリーは、本質的に主観的な形成物である。そのため聞き手が解釈を加えるのではなく、当事者に主観を語ってもらうことこそが優れたオーラル・ヒストリーの条件だ。
オーラル・ヒストリーを学ぶ者として、当事者の主観的な世界をこんなふうに聞き取りたいと思った文章がある。詩人であり随筆家、文化評論家でもあるハニフ・アブドゥラキブ(Hanif Abdurraqib)のThey Can’t Kill Us Until They Kill Us という本に収録されたエッセイだ。
ある出来事がハニフ・アブドゥラキブ本人にとって、どのような意味があるのか。
あの日、オハイオ州は雨だった
It Rained in Ohio the Day Allen Iverson Hit Michael Jordan と題した、その文章の始まりは詩的だった。
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