[9話]夢に見た「白亜の豪邸」暮らし。払った家賃は1000万円@着物ドレスデザイナー
◆「白亜の豪邸暮らし」の幕開け
家賃86万円の豪邸をネットで見つけてから、わずか10日で契約まで駆け抜けたリリーさんは、ついに、夢に見た豪邸暮らしをスタートさせた。
ここでの暮らしは、指紋で開ける玄関ドアにもワクワクするし、真っ白な空間には何を置いてもときめくし。
「あ〜〜これやりたかったやつだ!っていうエネルギーが、溢れ出てたの」
リリーさんはこの豪邸に「リリトリアノン」と名付けた。これは、マリーアントワネットの、はなれの城「プチトリアノン」への憧れに由来する。
「こんな豪邸に『残高が毎月0円になる女』が住んでいるなんて、庶民の希望だわ」
「みなさんを『どうぞ』ってお迎えできる拠点があることが、サイコーに幸せで、気持ちよくて…。この空気感をみんなにも味わってほしい!」という想いから、日々多くの人を招いたりお見立て会を開催したりして、楽しく過ごしたのだった。
◆怒涛の家賃、累計1000万円
この「理想の家」での暮らしで、毎日幸せを感じていたリリーさん。朝起きた時や夜の事務作業中など、ふと部屋を見渡すたびに「いい家だわ…」とうっとりし、エネルギーを充電していた。
「自分の望んでいた空間で過ごせるなんて、本当に幸せで。やっぱり『女はチャレンジ』!」
とは言ってもやはり家賃の負担は大きく「常に息切れ状態」。怒涛の毎日のなか毎月迫り来る86万円の支払いに、どーんと気持ちが下がる時もあった。
「神様、もう私に二度とこんなチャレンジをさせないでください…!」
それでも、やっぱりこういう空間に身を置くと"感覚"がもう全然違うのだそう。「おかげで"自分の欲望を制限しない感覚"が、さらに冴えてきたと思う」
リリーさんはこう付け足す。
「お金が貧乏より、感覚が貧乏だとダメ」
リリーさんは家賃をどうやって払えていたのか、自分でも分からないぐらいの目まぐるしい生活を送り、払った家賃は累計1000万円以上。
その頃、あのボンドから始まった「リリー着物ドレス」の売上は、リリース半年を迎えた今、2000万円を記録していた。
◆ありがとう、リリトリアノン
「まあ、1ヶ月だけになるかもしれないけど...」と恐る恐る借りたこのリリトリアノンを、最終的に1年間借りることができたリリーさん。
豪邸暮らしを「やりきった…」というところまで満喫し尽くしたリリーさんは、ついにリリトリアノンを「卒業」することにした。
「もともと私は旅人気質なんだけど、今回こうして初めて拠点を持ったの。そろそろまた、さすらいの人間らしい生活を送るのもいいかなって」
リリトリアノン卒業にあたって一番のきっかけとなったのは、長男夫婦が息子を授かり、リリーさんに初孫ができると判明したこと。それなら自分も「家族フェーズ」に移り、長男家族・次男と一緒に、元々住んでいた自宅で暮らしながら、世界をさすらうライフスタイルに移ろうと考えたのだった。
「リリトリアノンは恋人だった。お別れの時は泣いちゃった…。けれど、たっぷり味わったおかげでもう『豪邸に住みたい』という気持ちが昇華されて、ただただ『本当にありがとう!』と清々しかったなあ」
豪邸を卒業した1週間後、めでたく孫を授かったリリーさん。現在は、名古屋近郊にある元々の自宅で、長男家族・次男と、猫2匹・犬1匹と賑やかに暮らしている。
…が、リリーさんは今でも時折、物件探しを楽しんでいるらしい。