[2話]ボンド卒業!裁縫ができないなら、プロに頼めばいいじゃない @着物ドレスデザイナー
◆賞賛を受け、ドレスへの自信が膨らむ
お手製の「リリー着物ドレス(ボンドコレクション)」を着てランチに行くと、周囲からお褒めの言葉をもらったリリーさん。ポジティブな反応に背中を押され、他の機会にも着てみることにした。
試しに、ドレスを着て沖縄へ。すると…。
まず、飛行機やホテルで褒められた。そして国際通の着物屋さんたちにも、スーパーやコンビニの人々にも褒められ、生地を裏返してまじまじ見られたり、「写真を撮らせて」「ちょっと回ってみて」とせがまれたり。ステージ業界の人に「ドレスのショーをやりなよ」と応援してもらったこともあった。
そういった反響を受けるうち、リリーさんは「やっぱりこのドレスはすごい。これをみんなで着たら楽しいだろうなあ」と考えるようになった。
こういう時に「これは売れそうだ!」ではなく「みんなで着たら楽しいだろうなあ」と思うところに、リリーさんの人柄が表れていると思う。
◆ボンド卒業!縫い子さんを募集してみたら…
その後も、ボンドで何作かドレスを作ってみたリリーさん。
しかしボンドを使用するにあたって、生地によって「くっつきやすさ」が違う点や、糊がシミになる問題点などが発覚した。
試行錯誤しているうちにだんだんと、もっとクオリティを上げたいと思うように。「このままでも楽しいんだけど、1人だと限界があるなって」。
そして、Instagramで募集したり、知り合い経由でお願いしたりして、ついに縫い子さん数名をメンバーに加えることができた。「よし!これで圧倒的なクオリティのドレスが作れる!」
早速、実際にプロに縫ってもらうことに。
しかし…。リリーさんは、仕上げてもらったドレスを手に取ると「仕上がりは完璧なんだけど、ちょっとだけ"何かが違う"かも…」と感じたのだった。
「なんというか、シルエットに"魔法がかかっていない"というか。でもだからって、自分の中のイメージの伝え方が分からなくて…」。
どうしてこの"感覚"が伝わらないんだろう。
生地を仕入れ、仕立てを依頼するたびに減っていく資金。
リリーさんの心が折れてしまうのも、時間の問題だった。
◆うまく伝わらない原因が判明!?
そのまま数ヶ月、縫い子さんチームに「自分のイメージ」を伝えるのに苦戦していたリリーさん。
知り合った革職人に、現状の課題について何気なく相談すると、サラッと2つのアドバイスをくれた。
まず、「感覚では伝えられない。どこからどこまで何センチなのかまで詳細に伝える」こと。普通のシャツ作りでさえそうするのだから、ドレスなんて尚更だと言われた。
そして「まだ世の中に無いものを作るんだから、根気よくやる」こと。完成形はあなたの頭の中にしか無いんだから、イメージが伝わらなくて当然だ、と言ってもらったのだ。
それを聞いてハッとしたリリーさん。「そうか、私の依頼は抽象的すぎた…」と反省したと同時に、「何度やってもうまく行かなくて当然なんだ」と気づくことができた。
◆仕切り直して再出発!
アドバイスを受けて、プロの縫い子さんたちと再出発したリリーさん。
「あれ?みんなに長さを伝えたいのに、測るたびになぜか違う…」と苦戦しながらも、メンバーたちと試作作りを続けた。
後になってさらには、着物の生地によって、長さを少し変える必要があることも知った。リリーさんにとっての服作りは、やることなすこと全てが新発見で、勉強だった。
そして1年が経ち、ついに「魔法のかかったドレス」が完成!納得できる形のものをチームとして作ることができたのだった。
しかし。
もちろん他にも「問題」はあった。
問題というよりは、「大問題」である。
それは、ついにお金が底を着いたことだ。
残高:2万5000円。
どうするの、リリーさん〜〜〜!