[7話]豪華な空間が好きなら、豪邸に住めばいいじゃない@着物ドレスデザイナー
◆夜景の最高な「タワマン」を発見!
「毎日がスイートルーム」。そんなことを考えるうち、降りてきたのは「タワマン…?」だった。それはきっと、リリーさんにとって「綺麗な景色の見える暮らし」といえばタワマンだったから。
早速「名古屋 タワマン」で検索をしてみると、とんでもなく夜景の綺麗なタワマンの部屋を見つけ、「ここがいい!」とすぐに問い合わせた。
しかし家賃は、55万円。55万って、おいおい…。
しかし、「ここに行ってみたら自分はどのくらいワクワクするんだろう?」ということが気になったリリーさん。
「『うわ、すご〜』なのか、『うっわあああ!こりゃすごいいいい!!』なのかがバローメーター。それを自分がどれほど欲しいのかは、実際に目の前にして初めて分かることなの」
自分にタワマンを与えてみた時のワクワク加減をチェックするため、すぐに内見へ。実際に目の当たりにすると、確かに興奮が止まらまなかったが、一方で「55万かあ…」と葛藤した。
不動産会社の担当者に「とてもお似合いなので、一回審査を受けてみましょうよ!」と推してもらったのもあり、「審査に通るはずがないけれど、現実を思い知るために一回受けてみるのもいいかも」と、受けてみることにした。
「まあ、スイートルームもやりきったし!もし審査が通ったら、腹をくくって借りるか!」と意気込んでいたら…。
1週間後、不動産会社からの連絡。「審査には通りました!でも…、医療法人との同時審査で負けてしまいました」
それを聞いて、膝からがくりと崩れ落ち、うなだれてしまったリリーさん。「ああ、こんなにも自分は、あのタワマンに住みたかったんだな…。私のおもちゃ、取られた…!!!」
その時初めて、「自分はこんなにも、あの家に住みたかったんだ」と気がついたのだった。
◆出会ってしまった「白亜の豪邸」
タワマンを医療法人に「取られ」、1時間ほどぐったり落ち込んだ後。「もしかして…目の前で持ってかれたってことは…もっといい家があるってことじゃない!?」
すぐに家探しを再スタートすべく、アガる家の検索を再開。
すると画面に突然、一軒の「白亜の豪邸」が現れた。
内装は、床や壁だけでなく、出窓、床柱、靴箱、など全てが白く塗られていてた。
リリーさんは当時、自宅を隅々まで白で塗りたくっていたほど「白い家好き」。スマホに表示された白亜の豪邸をひと目見て、それはそれは大興奮した。
さて、家賃は…。ん?書いていない。ただ「ask」とだけあった。高すぎて、書くことさえもできないのか…?
すぐに電話をしてみると、身元の分からない人には家賃さえも教えてもらえなかった。でも、どうにか聞き出したのは「86万円」。「あ…ありがとうございました〜」と電話を切ると、「あは、あはは…」あまりの金額に笑えてしまった。
◆真夜中の「視察」、そして実際の内見へ…
家賃86万円?冗談じゃない!!
でも、こんなすごい家を自分に体験させてあげたら、どうなるんだろう…!?
行動を起こさない理由が無かったリリーさんは、勢いで内見を予約した。
内見の前夜、待ちきれなかったリリーさんは「白亜の豪邸」をひっそりと見に行ってみると…。
もう、細胞たちがスタンディングオベーション。まずその立地が「高級住宅街」で、スポーツ選手や財閥関係といった、近所同士でも身元を明かさない人たちが住んでいるようなところだった。
建物はもちろんのこと、このエリアが放つオーラに圧倒されたリリーさん。「車で通りかかるだけで、足から脳天まで一気に血が巡って、全身に鳥肌が駆け抜けたの…」。
そしていよいよ内見当日。
豪邸のドアを開けた瞬間、「ただいま〜」と声が出た。
不動産スタッフに対しても「どうぞ上がって」と、まるで家主のような振る舞いが自然と出てしまうリリーさん。
「この豪邸に来るのは今日が最後かもしれないし…」と思いながらも室内を見渡すと、どこに何を置いて、どんな使い方をするのかまで鮮明にイメージが浮かんだ。
さらにこの豪邸は、写真だけでは分からなかったが、とにかくこだわりが詰め込まれていることが分かった。例えば、住人ですら普段見ることのない勝手口裏側のライト、つまり「見えないから節約できるはずの部分」の細部まで、しっかりとこだわりが行き届いていたのだ。
リリーさんの心は、未だかつてなく「うわあああああああ」と大興奮し、想像を超えたワクワクによって、心が完全に掴まれてしまった。
「リリー様、お似合いです!」
「知ってるよ…。この家は、私が一番似合ってる」
しかし現実的に考えると、家賃だけでなく、仲介手数料や敷金礼金といった初期費用も必要だ。「まあ、物理的に、無理だよね〜」。
でも、この体の震え具合を見ると、タダでは終われない…。
この日は「出直してきます」と言って、一旦帰った。
う〜ん。こんな金額は払えない。それなら…。
「ミラクルを起こせばいいってことね?」
自然とそれが口からこぼれたリリーさん。払えないものを払うより、そっちのほうがあり得るかも、と思ったのだった。
「私の細胞がこんなに震え上がっているんだから、絶対に『何か』が起きる…。それが自分で分かるの」
◆豪邸のオーナーに想いを届けたい
内見の帰り道、豪邸オーナーに対して、感謝と尊敬の念が浮かんできてたリリーさん。
未だかつてない「うわああああああ」という興奮を体験できたこと。自分が夢にまで見ていたお家を、(こちらの依頼もないのに)再現してくれていたこと。その中を見せてくれたこと。
そして、オーナーにとっては「自分が住む家」ではなくただ「貸すための家」なのに、あのこだわりっぷりを見せてもらったこと。リリーさんは、それらに魂を撃ち抜かれたのだった。
そこで、一緒に内見に来ていた妹にふとこんなことを言ってみた。「なんだかもう、すごかったよね。明日オーナーさんに、お礼の手紙でも書こうかな?」
妹は「うおお、本気だね!?!?」と大笑いした。
その翌朝。手紙を書こうかなとぼんやり思っていると、昨日の不動産担当者から電話がかかってきた。
「実は、豪邸オーナーにリリー様のことを伝えたのですが、『どんな人?』と大変興味を持っているようで…。一度お会いしてみませんか?」
なんと、リリーさんの想いは、手紙を書く前に届いてしまったのだった。
「物件オーナーって普通、借りる人にすら会わないものなのに、到底借りられない私に会ってくれて、ここまでワクワクさせてくるなんて…!」
オーナーの心意気に感激するリリーさん。
一体どんな「ミラクル」を起こすのか!