[3話]残高が2万5000円になったので、寿司を食べに行った @着物ドレスデザイナー
◆所持金がついに・・・そして寿司事件
着物を仕入れたり、縫い子さんに依頼したりして、ついにお金が底を着いた。残高は2万5000円だ。
普通なら、「え?どうするの?」「仕事は?食費は?生活は?」と、これからのことに頭を抱えるだろう。
このころ長男は結婚して巣立ち、次男と暮らしていたリリーさん。次男に正直に伝えた。
リリー「やばいよ。ついにママさ、全財産が2万5000円になっちゃった」
次男「やばくない?」
リリー「うん。だからさ・・・
お寿司食べに行こ!」
次男「ハァ?」
次男の反応は正しい。大いに正しい。しかしリリーさんは続けた。
「こういう時にさ、ひもじく『梅干しとご飯』…じゃあないんだよ。それなら最高のご飯を食べながら、これからのことを考えようよ。今せっかくお金が"ある"んだから」
「大ピンチの時こそ、自分を最高に奮い立たせなきゃ。小さくまとまっちゃだめ!」
これが「リリー・ルール」だった。
◆資金はどうしてたの?普通なら握りしめるお金
リリーさんの所持金の額がどうであれ、なぜこんなにも、物怖じしない「羽振り」ができるのだろうか。
そもそも、ドレス作りの資金はどうしていたのかというと。それは「離婚の財産分与で手元に残った"全ての"お金」だった。
「これは本当に"最後のお金"になるだろうから、普通なら怖くて怖くて握りしめる、のでしょうが…」とリリーさんは続ける。
「どうせ何に使おうが、遅かれ早かれ、無くなる日は来る!だったらいっそ湯水のように使って、"金銭感覚をアップデート"しよう!と思ったの」
ほうほう。
一体、何が「いっそ」なのか。
しかしリリーさんは「そんなの愚問よ」と言わんばかりに、手元にある最後になるかもしれないお金を、文字通り使いまくった。
◆金銭感覚のアップデートって?
金銭感覚のアップデートとは、お金をしっかりと使えるようにすることである。
手持ちのお金を使えるかどうかは、「持っている金額」だけでなく「マインド」にかかっていると、リリーさんは考えていた。これにはリリーさんの実体験から来ているそうだ。
「人って、何かやりたくても『お金がないからできない』とブレーキをかけちゃうでしょ。例えば、財布に1000円が入ってるのに、本当に欲しいハーゲンダッツは『買えない』、100円のアイスなら『買える』と判断する。でも実際は1000円あるんだから、ハーゲンダッツを買えたじゃない?」
このマインドでいる限り、今後いくらお金を手にしたとしても『使う』ことが結局できない。リリーさんはそれに気づいたと言う。
「それに、自分の望みを我慢しながら家族に対してはお金を使っていると、その見返りやねぎらいを求めてしまうような感覚も、良くないなと思ったの」
そこでリリーさんは「自分が『欲しい』と思った時点で買うことは決まっている」とし、必ず自分を満たしてあげることに。すると、「自分」=「自分の望みを受け入れてくれる存在」という構図が成り立つようになった。
「おかげで、自分に対して安心して『本当はこうしたい』って正直に言えるようになってきたの。自分に自分が受け入れられることが分かっているから、口に出すのが怖くてたまらない『本心の望み』もぺろっと言える状態ってことかな」
リリーさんは、最後にこう付け足した。
「ときめくものを自分に与えないことは、お金が減ることよりも、人生の損失なの」
ケチケチしても、どうせいつか来る「お金が無くなる日」が先延ばされるだけ。それならばと、ためらいなく命懸けのジェットコースターに乗っていたのが、当時の(または、もしかしたら現在も)のリリーさんの生活だった。
◆この残高をどう切り抜ける?
お金が尽きるのが早いか、感覚がアップデートされるのが早いか。そんな博打生活を通し「自分の願いを叶える自分」がすくすくと育てられた。
そうして見事、マインドがアップデートされたリリーさん。
だが、そうは言っても、やっぱり残高は2万5000円。
そこから寿司代が引かれた。
しかし心配することは全くない。
だって、お支払いはクレジットカード。
つまり、翌月の引き落とし日までに「これを解決できる状況」を作ればいいだけなのだ。
でも、どうやって?
・・・そう。
ついにリリーさんは、「リリー着物ドレス」を世界に売り出すことにしたのだった。