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[10話]ファッションショー開催!自由すぎるショーは「始まる前から成功している」@着物ドレスデザイナー

◆ショー開催のきっかけは、お客さんとの偶然の出会い

家賃86万円の豪邸「リリトリアノン」を大満喫して卒業したリリーさんは、引き続きまた全国のホテルを点々としながら「ドレス試着会・リリーお話会」を開催していた。

ドレスを着るとみんな笑顔に!思うままに生きるリリーさんとのお話を通して、抑えていた魂が解放される感覚になるのだそう

ある日のこと。大阪に行く予定ができたので、それに合わせて急遽「大阪でお話会・試着会を開催します!」と告知した。開催日はなんと「明日」だ。

突然すぎる告知にも関わらず、会に惹かれた6名が参加してくれた。そのうちの1人に、「リリードレスを着ている友人がいて、リリーさんやドレスのことが気になっていました。今回はよく分からないまま、でもなぜか『行かなきゃ!』と思って来てみたんです」という、人がいた。

その人はなんと、来月、京都の岡崎庵(能楽の舞台がある会場)で行われるイベントの主催者だったのだ。ちょうど、能楽の舞台を使う演者さんが出演キャンセルになってしまい、代わりに出演してくれる人を探しているという。

「私、ここに来た理由が分かりました。リリーさん…よかったらイベントのステージで何かやられませんか?」

これには、ファッションショーを開くことが夢であるリリーさんにとって、またとないチャンス。「是非」と答えた後、正直にこう続けた。

私、『ときめき』を感じる場所じゃなきゃできないタイプで…。現場の写真を送ってもらえますか?」

それで後日送られてきたのが、舞台となる岡崎庵のステージと、庭に咲き誇る枝垂れ桜。

能楽のステージや、庭に咲き誇る枝垂れ桜は、着物ドレスのショーにぴったり

「ステキ!ここだわっ!リリードレスのファーストファッションショーのステージは、ここだ!!!」

資料を見て、ときめきをスパークさせたリリーさん。こうしてなんと、夢に見たリリードレスのファッションショーを、迫る来月に行うことに決まったのだった。

◆何も分からないまま、ショーの準備に突っ走る

とは言っても、ショーをやるって、まずどうすればいいのだろうか。

写真では見たものの実際にどんな会場なのか。モデルは何人集まるのか、ステージには何人上がれるのか。何も分からない。けれど「ちゃんと準備を整えてからじゃなきゃ…」と足踏みはせず「とにかく一回やってみよ」と腹を括り、準備に取り掛かることにした。

「見切り発車が通常運転。いつだって、直感を信じてるの」

リリーさんは急遽周りの方を頼って、音楽をいじれる人にショーの音源を作ってもらい、ビデオクリエイターには当日の撮影とビデオ編集をお願いした。

「でももう来月なのに、モデルはどうするんですか」と訊かれ「モデルなら、います」と堂々と答えたリリーさん。Instagramでモデルを募集すると、翌月の平日開催のショーにも関わらず、20~70代のドレスファンからすぐに25人以上からのエントリーがあった。中には、このショー出演をきっかけに、思い切ってドレスを購入してくれた人までいた。

エントリーしたモデルたちからは「当日はどんなアイテムを組み合わせればいい?」「本物のモデルみたいに歩けないけれど..」と相談が来た。しかし「自分の思うままでいいの。それで素敵だから!」と、コーディネートや動きなど、全てを本人に託した。

リリーさんが目指したのは「完璧にいくかどうか」ではなく「思うままにやってみる」というその感覚。完成形が分かりきったことをやるよりも、そっちの方が大好物だった。

「この勢いで進められたのは、やりたいことを自分にやらせてあげる積み重ねがあったから」と話すリリーさんは、こうして周りの方々に助けられながら、あれよあれよと当日を迎えたのだった。

◆ショーの当日、自由すぎるリハーサル

ファッションショー当日。唯一行ったリハーサルは、30分かけて2回通したのみだ。

リハーサルでは「これでいいのかな」と恐る恐る歩くモデルたちもいるなか、リリーさんの頼もしい声が掛けられた。

「ここから出て、ここで止まる。ルールはこれだけ、あとは自由!」
「前の人と自分の動きが違っても、どっちも間違いじゃないから」

「踊ってもいいし、何してもいいの!」

リリーさんがその場で全体に声をかけ、「決まり」の無さすぎるやり方がその都度定められた。

20人以上いるモデルたちは、登場する順番さえも決まっていない。舞台袖で「次、私が行こうかな」と覚悟を決めた人から、ステージに飛び出していくスタイルだ。

そんな自由すぎるリハーサルは、1回目と2回目で毎回異なる形を作り上げ、明確なルールがほとんど無いまま本番を迎えた。しかし「どうやっても正解」なのだから、どうすればいいのかなんてそもそも無いのだった。

「意識したいのは、いかに『既存の概念』に惑わされずに、今この瞬間、この状況、自分自身を面白がれるか!リリードレスも、そんな生き方ができるドレスを…と想いを込めて創っているから」

ショーのために創った帽子。溢れるワクワクのエネルギーに"負けない"オーラの帽子を徹夜で制作した(もちろんボンドで)

「手作りの帽子でショーに出ちゃう遊び心が、いちばんの自分へのご褒美なの」

◆ミュージックスタート、ファッションショー開始!

リハーサルを終えて本番直前、リリーさんは全員を集めてこう声を掛けた。

「ドレスを愛してくれる人が全国から集まって、楽しんで歩いてくれることが、何物にも変えられない喜び。まだショーは始まっていないけれど、この時点でもう成功しているの。あとは最高の気分を味わうだけ

そしていよいよ本番。ステージに音楽が流れると、それぞれモデルが1人ずつステージに登場し、それぞれがとてもイキイキと、自分にふさわしいドレスとコーディネートでステージを歩いた。

思い思いの着こなしと動きで、ドレスを纏う自分を表現
舞台袖で「次は誰が行く?」とソワソワしているモデルたちに「次あなた行っておいで!」と勇気づけるリリーさん
最後はリリーさんが登場し、拍手喝采!
最後の記念撮影は、全員が本当にいい顔をしていた

こうしてファッションショーは大成功。実際に開催してみて、気づいたことがたくさんあった。音響の仕事や照明の工夫、カメラの数についてなど。どれも当たり前のことなのかもしれないが、初めてショーを開くリリーさんにとってはどれも大きな学びだった。

リリーファッションショーは、会を重ねるごとにパワーアップしていくのだろう。

◆感謝が飛び交うトークショー

ファッションショーを終えると、モデルたちは観客席に移り、ショーを見た観客と一緒にみんなでリリーさんのトークショーを聴いた。

トークの内容は「着物ドレス」を通した、生き方の話。インスピレーションが突然降りてきてから、ボンドで作り、リリースし、今ではたくさんの人に届いているストーリーの、背景にあるマインドセットだ。

自分が気持ちいいか、面白いか、楽しいか、で全てを選択して、その気持ちに対して全力で生きているんです。するとどんどん面白いストーリーが出来上がる。それが自然に広がっていって、応援してくれる人が出てきて、夢が叶っていくのかなと思います」

どんなに小さな望みでも、大きな望みでも、自分にそれを叶えさせてあげる勇気が大切。この癖がつくと自分に嘘がつけなくなってきて、呼吸がしやすくなってくる」

最後に「安心してくださいね。リリードレスはもうボンド作品ではないですから」と笑いを誘うと、「こんなに美しい光景をありがとうございます」と締めくくり、時折涙ぐみながら話を終えた。

トークを終えたリリーさんは、会場に対して質問や感想を求めた。すると観客や出演したモデルたちから挙手があり、このドレスやショーに対する感想や感謝が述べられた。

観客「感動しました。皆さんすっごく似合ってる。着物を着崩してるとかではなく、個性が出ていて、それぞれが輝いていました」

モデル「リリーさんのオーラや生き様が、人々の扉を開けてくれる。最初はこんな煌びやかなドレスに袖を通すのが怖くて自分には無理だと思ったけれど、今ではこれで電車に乗れる。こんなエネルギーをくれてありがとうございました」

ショーに感激し、両手を合わせたまま座り尽くす観客の方も

観客「私、感動しちゃって…。人の目を気にせず、自分らしくあることの素晴らしさが…(涙ぐみ、言葉につまる)」

すぐさまリリーさんは「あなた!心に何か、しまわれたままの宝物があるんでしょう」と声を掛けた。

「輝いている人を見て、胸が熱くなったり涙が溢れたりするのは、必ずあなたの中に、燃やしたい情熱の宝物が隠れている証拠だから。もう、扉を開けてもいいタイミング!そうしたら面白くなって、次々開けたくなるから」

デザイナー、モデル、観客。お互いからの愛や感謝が飛び交って会場が一つにまとまり、素晴らしい空気に充ちている。ファッションショーは、このトークショーも含めて完成されているのだった。

◆これからのリリーさん

ドレスのファッションショーを開催する。最後に自分が両手を広げて登場し、拍手を浴びる。

その光景は、第1話で「あ〜私、着物ドレスデザイナーになるのね」と突然降りてきた日から描いていたものだ。

それを2年半で現実にしたリリーさんは「夢が叶う時って、叶えさせてくれた人の夢もまた叶っているの」と話す。

「ショーを開きたかった私の夢が叶うとき、イベントに空きが出て困っていた主催者さんや、ショーを歩いてみたかったモデルさん、買うきっかけが欲しかった人たちとか、みんなの夢もまた叶ってるでしょう。これが、夢を叶えるっていうことなのよね

もともと自分のために創ったボンドのドレスは、いつしか世界中の人を勇気づけるリリードレスに

この物語の全ての始まりは、実績も何もないのに「私は着物ドレスデザイナー」と名乗ったことだった。まずは「そう生きると決める」ことが何よりも大切だとリリーさんは言う。

自分の小っ恥ずかしさが見え隠れすると、世間は『そうなる覚悟ができてないんだ』とジャッジする。でも自分が『私はデザイナーです』と堂々と生きていけば、世間は『そうなんだ。そういうデザイナーもいるのね』と納得するの」

堂々と言うだけ。「私?着物ドレスデザイナーです(今日から)」

今日からドレスデザイナーになる。ドレスをあの人に届ける。一目惚れした豪邸に住む。ファッションショーを開く。どれに関してもリリーさんは、インスピレーションが「降りてきたから」と言っている。

しかし実際は、他の誰にでも同じく何かが「降りてきている」のではないかと思う。

ただ、リリーさんは、それを「まさか自分がね」「まさか今すぐにはね」とむげにしない。降りてきている感覚に気づく勇気を持ち、向き合うことを自分に許可できるのが、彼女の強さであり、魅力なのだろう。

自分の「気になる」「やりたい」「好き」に真っ直ぐ向き合い、波瀾万丈に駆け抜けているリリーさん。

ずっと夢描いてきたファッションショーを終えた今、今後のリリーさんの行方に目が離せない。もっと大きなショーの開催?世界への発信?それともやっぱり、今はゆっくり休む気分なのだろうか。

今後についてリリーさんに尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「今後について?そんなの分からない。だって、今日の午後のことすら分からないんだから(笑)」


リリーさんの物語は、まだまだ続いていく。

「彼女はリリー」fin


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