[5話]「どうしても着てもらいたい人」に会いに長崎へ@着物ドレスデザイナー
◆一番に思いついた「着てもらいたい有名人」
ドレスをリリースする半年前のこと。
試作中のドレスを見たリリーさんの弟に、「有名人が着てくれたら面白そうだね。誰に着てもらいたいとかある?」と訊かれた。そこでリリーさんが思いついたのが、「さやちゃん(吉野さやか さん)」だった。
弟「え?レディーガガとかじゃないの?」
リリー「う〜ん。今はさやちゃんしか浮かばないな」
リリーさんは以前から彼女の書いた本を読んでおり、「この人、ものすごく自分に似てるかも」と思うところがあった。しかし普段から彼女のこと意識していたわけでもなかったため、さやかさんの名前が突然浮かんだことに自分でも驚いたのだった。
◆まさかのチャンスが到来
「彼女の名前が浮かんだってことは…、ドレスが完成したら、本当に届けに行くのかも」とぼんやりイメージしていたリリーさん。
しかし、届ける方法まではまだ分からなかった。リリーさんが想像していたのは、1対1できちんとお渡しするイメージ。だから、「本人に会える大人数のイベント」に参加して渡すのは、リリーさんのインスピレーションとは異なっていたのだ。
頭の片隅にこの出来事を留めたまま半年が過ぎ、いよいよドレスを発売しようかというころ。
さやかさんがInstagrmで「1対1の個人セッション」を開催するのを、本当に本当に偶然見つけた。
マンツーマン!?しかも長崎の自宅で!?こんなのありえない。
数万円する枠を即決で買った。もちろんカードで。
◆いよいよ初対面!フェリーで壱岐島へ
いよいよさやかさんの元に行く日が来た。ワクワクしながら飛行機に乗り、フェリーで2時間過ごし、レンタカーを乗り継いで長崎の壱岐島にある「邸宅」まで向かう。
さやかさんにピッタリだと確信している、赤いドレスを届けるためだ。
・・・
やっと到着してドアベルを鳴らすと、玄関先に現れたさやかさんは「なんですかそのお召し物!?」と目が釘付け。
「着物ドレスです。実は今回、さやかさんのコンサルを受けるためではなくて、私のドレスをお贈りするために会いに来たんです」
目をキラキラさせるさやかさんを見て、リリーさんは付け足した。「…もしよかったら、私物ですが他にもドレスを持ってきてるので、着てみますか…?」
「え!?!?着たい着たい!!」
そうしたらもう、帽子を変えるわ、髪型も変えるわ、撮りまくるわで、キャーキャーキャーキャー、最高の時間。
さやかさんは「実はここ半年、どのお洋服もしっくり来なくて、何を着ようか悩んでいたんです」と言う。半年前。それはリリーさんが、弟に訊かれて咄嗟に「さやちゃん」と浮かんだ頃だった。
感激したさやかさんは、さらにこう続けた。「このドレスはお洒落だし、着やすいし、何より身体が綺麗に見える。ついに運命の服に出会えました…!」
「このドレスでクローゼットをいっぱいにして、毎日着たい。10着ください」
こうして、残高2万5000円から「寿司代」「壱岐島の交通費」が引かれるリリーさんの口座に、150万円が入った(当時の価格)。
「このドレスを毎日着れると思ったら、細胞のストレスが緩和されていくみたいにジュワーと溶けていく。よっぽど私、このドレスを望んでいたみたい」
◆溢れる感動、止まらない通知
感激するさやかさんの「10着オーダー」を受け、さらに感激するリリーさん。「この赤いドレスも買わせてください」と言ってくれたけれど、「ううん、これは贈らせて!」と、赤いドレスは予定通りプレゼントした。
「億女邸」から帰ると、さやかさんは自身のInstagramに感動の旨を投稿。
すると、リリーさんの元にはフォロワー通知とメッセージが続々と届いた。
リリーさんは、さやかさんからもらった「ある言葉」が今でも忘れられない。