[6話]ドレスの試着は、全国のスイートルームで @着物ドレスデザイナー
◆リリー着物ドレスの買い方は2つ
リリー着物ドレスを発売して以来、よく聞かれるのが「どうやって買えるんですか?」という質問だ。リリーさんは、主に2つの方法を取っている。
方法(1)InstagramやHPで販売
作品が出来上がり次第、Instagramに投稿して並べておく方法。「これが欲しい」と連絡をくれた人に作品を届ける、最もシンプルなスタイル。
過去には、Instagramのライブ配信でドレスを紹介しながら、リアルタイムで実演販売をしてみたこともある。
なお、現在は公式HPでの購入ができるようにも準備している。
https://lilydress.jp
方法(2)「試着会・お見立て会」
最もゴージャスで、リリーさんらしさが溢れる方法。まず、年に数回、1対1でお客さんに会う機会を設ける。そこに来てくれた人とじっくり話しながら人柄を知っていき、持ってきたドレスから一緒に選んだり、その人のためにゼロから作ったりする方法である。
創業当時、この「試着会・お見立て会」の参加費は1万円。ホテルのツインルームを借り、そこを会場としていた。
この「試着会・お見立て会」には来る人は「買うのはできないと思いますけど…」と言って入室することも多い。しかしリリーさんと話したりドレスを実際に着てみたりする中で「そうか、思うままに自分を着飾ってあげるのって、こんなに気持ちがいいものだったんだ」と気がつくのだそうだ。
「買うのには決断がいると思う。でもそれは出費の決断ではなくて、この『普通ではないお洋服』を自分に着せてあげる決断。
そして得られるのはドレスではなくて、『自分のど真ん中に君臨するドレスを身に纏う』というこの感覚なの」
もちろん「試着したからには買わなきゃだめかな…」と気を遣う必要は全く無い。だってこのドレスは「買わなきゃだめかな」という気持ちではなく「心から欲しい」と感じる時にのみふさわしいから。
だから、購入には至らなくても、試着の瞬間をただ全力で楽しんだり、「実物リリー」とのお話を楽しんだりするのも、素敵なひと時なのである。リリーさんは決して「ドレスを売ろうと」しているのではなく、「自分をさらけ出す楽しさ」の気づきを与えてくれる。それがこの「試着会・お見立て会」の本質なのだ。
◆また止められない「リリー節」。せっかくやるなら、最高の空間で…
リリーさんの元には、時折インスピレーションが降りてくる。これまでの話にも書いてきたように、「え?画家…?」「え?着物ドレス…?」「デザイナー…?」「さやちゃん…?」などだ。
次にふと降りてきたのは、「え?スイートルーム…?」だった。
そうだ。魔法のドレスを試着するんだから、普通のツインルームじゃなくて、自分もお客さんも最高に「アガる」場所、このドレスにふさわしい場所じゃなきゃダメだ。
ああ、そう思っちゃったらもう、次からはスイートルームでやるしかない…。現状の参加費1万円ってことは、スイートの場合の参加費は、う〜んと…。
しかし。その瞬間、またもや"大変な"インスピレーションが浮かんでしまった。
「スイートなのに…1万円…?」
ん?なんだ今のフレーズは。「おいおいおい!やめてよぉ〜〜!?」
しかし、降りてきたものはもう止められない。リリーさんは、「ドレスお見立て会@スイートなのに1万円」を、東京・名古屋・大阪・京都・沖縄で開催することにした。
早速、全国各地のスイートルームを予約。本当は、「もし誰も来てくれなかったら…?」とガクガク震えていた。震えながらも「思い切って」先回りでホテルを予約できてしまうのが、リリーさんの恐るべき力である。
それでもSNSで参加者を募集してみると、見事全枠が満員となった。
スイートルームでのお見立て会にあたり、リリーさんは、ドレスを楽しめる最高の空間を準備してお客様を出迎えた。
持ってきたドレスの数々はもちろん、組み合わせたらもっと楽しくなる「ド派手サングラス」や「帽子」などもたくさん並べて。大きなお花もたくさん取り寄せて、室内をきらびやかに飾った。
開催当初、この「スイートルームお見立て会」は3日連続で開催することが基本だった。
しかしある回の最終日、つまり3日目のこと。お花屋さんから取り寄せたカサブランカが、なんだか部屋に置いたばかりの時よりむしろ元気に咲いていた。
「あれ、これは…。花が『3日じゃ短いぞ』って言ってる!?」
そうして、次回からスイートルームでお見立て会をするときは、1週間に延ばして取るようになった。
◆素敵な空間を「借りる」から「住む」へ?
名古屋近郊に自宅はあるものの、お見立て会のために全国のスイートルームを飛び回るうち、だんだんと「あれ?私ってスイートルームに住んでるみたい…」と思い始めたリリーさん。
「もういっそ、ホテルを借りるよりも、こういう家に住みたくなってきた。毎日がこんなスイートルームだったら…うわっ、楽しそう!」
リリーさんは、きらびやかな空間を点々として過ごすのではなく、そういった空間に身を置いて「暮らし」をしてみたいと思うようになったのだ。
そんな時に、またまた「降りてきた」ものがある。
「え?タワマン…?」
それは、ドレスをリリースして、半年ほど経った頃だった。