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胎動がない

2020.07.13

当時、息子(4歳)の支度と保育園送迎をし、そのまま戻ってきて、バタバタなまま在宅勤務をスタートさせる、そんな毎朝を送ってました。

あと1ヶ月で産休ということもあり、その日は朝から引き継ぎで忙しく、二人目の慣れもあり、お腹の赤ちゃんを気にかけてあげられませんでした。

その日の仕事を終え、息子を迎えにいき、夕飯の支度をしようとした時に、はっ!としました。

「胎動、今日あった?」
「きっと大丈夫…きっと寝てるだけ…」

そう思おうとしても、急に胸騒ぎがして、手が震えたのを憶えてます。

横になったものの、時間が経っても胎動はなく、夫に連絡し、早く帰ってきてと伝えました。夫の帰りを待つ間、息子へご飯を食べさせ、夫が帰ってきてすぐに、かかりつけの産科クリニックに電話して、急患で行きました。

「きっと大丈夫…エコーで診たら心臓は動いてるはず…」

病院に到着し、助産師さんが迎え入れてくれて、「まずは診てみましょうね」と言い、お腹にドップラーを当てました。

「カサカサ」という音だけが返ってくる。

その時、経産婦なのに、赤ちゃんの心音が聞こえる装置だということを忘れていて、どういう状態かうまく飲み込めませんでした。どこかでまだ「大丈夫」と信じたかったんだと思います。

助産師さんが、「先生に診てもらいましょうね」とだけ言いました。私は、答えが怖くて、「どういう状態ですか?」と聞けませんでした。

助産師さんからの電話連絡で診察にきた先生が腹部エコーをします。その時、モニターを直視できなかった自分がいました。そして、先生は、一息ついて、私の目を見て言いました。

「とても残念なんだけど…赤ちゃんの心臓は止まってます。」

この時のことは、とても鮮明な映像で記憶していて、思い出すと胸が締め付けられて、苦しくなります。

診察中も、診察後に助産師さんが翌日からの説明をしてくれた時も、まったく涙が出ません。話の内容は理解してるんですが、どこか他人事のように感じてました。

先生と助産師さんにお礼を言い、病院を出て、夫と息子が待つ駐車場に向かいました。ふたりの顔を見た途端、どっと涙が溢れ出てきました。

「赤ちゃん、心臓止まっちゃった。ごめん…ごめん…なんでなんだろう…ごめん…。」

夫はちからない声で「えぇ…まじか…」と天を仰ぎ、息子は泣いている私をみて、「どうしたの?どうしたの?」と言い、普通じゃないことを察知したようで、しがみついてきました。

その後、息子が車の中で寝てくれたこと、近くに住む私の両親へ電話したことは憶えているのですが、夫婦で車の中で話したこと、家に着いた後のことは、あまり記憶がありません。ただ、一晩中、思考の波に飲み込まれて、一睡もできず、朝を迎えました。

「なんでこんなことに…」
「昨日の夜は胎動あったのに…」
「なんで朝や昼間に気づかなかったの…」
「私のせいだ…」
「ごめんなさい…」

しかし、その一方で、冷静な自分もいたような気もします。

「この事実はもう変えられないんだ…」
「明日からの息子の生活は何が最善だろうか…」
「夫は大丈夫だろうか…」
「義理の両親や職場にどう伝えよう…」
「赤ちゃんに母親としてしてあげられることはなんだろうか…」
「ラミナリアの痛みはどのくらいだろうか…」

続きます。

お読みいただき、ありがとうございます。

lily

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