zephyr
夢か夢想か、たしかにそこに存在してたそんな、風景達
ロンドン/オックスフォードの紀行文
春風をまえに少しの秘密 虜 それはとけるような髪 瞳 それは檸檬の光の粒 それから それからね 曖昧な淡紅色 それは私と貴方 瞼にのせた花弁 それは空想の窓 春風には少しの秘密を 仄かに香る魅惑には心からの愛を これは私だけの秘密 私の想いをのせて運ぶ それは 曖昧な春風 それは 微笑む春の女神
何も映していないような、 そうでもないような そんなぐれいの眼、 優しさと諦めは紙一重、 だから月光は心地よいのね、 今宵の紺色の下に隠したことは 秘密にしたまま
有限な時間にこそ成り立つ だから儚さは美しいのだと知りました。 いつかは溶けて消えるものだとしても たとえば夜眠りにつく頃、 夏至、肌寒さの残る気温のなか、 雨上がりの散歩道を歩いている。 道端からふっと香る野花の香りのように 静かに鮮明に蘇り色彩られていきました。
吹かれる微風、 揺れる草木はこの上なく瑞々しく、 香り始めた桜の淡紅が貴方の髪を撫でている いつまでも秘密になんかしていないわ、 幹に寄りかかって本を読む貴方、 少しだけ微笑んでいるその顔は罪深くて、 はやく、はやく伝えにいきたいの
空の色は重なり 私達は共に溶けていく 夜に向けて支度を始めましょう 蒼く染まる空に応えるように 姿を見せた 仄かな月は 木漏れ日と同じ優しさで
たった一人の、 もしくは たった一つの言葉で簡単に揺らぐ日々 ひとって 境界線の外にいる人が思うよりも 簡単に壊れてしまうし弱いよね 言葉にできない繊細な気持ちを なるべく高い密度で 掬い取れるひとになりたいとおもう
こころのぜんぶ、 陽が沈む前、 冬の到来に備えた木の葉が、 一つ、 先の道に沿って揺れるのが見えた。 堪らず駆ける、 こころのぜんぶ、 全部が、 風に紛れればいい、 この愛しさが伝わってくれたらいい
風がそよぐのをみていてね かんじているのだから もうじゅうぶんなのよ はじまりもおわりもない ただ私も貴方も このまま微かに漂っていられたら それでいい
ラテン語では水の器を意味するらしい紫陽花を 今晩は見掛けました しとしとと降る雨に濡れた藍色に、 深くまた静かな 安らぎを覚える夜は久々で、 四季はまた巡ったのだと 少しばかり心が揺らめきました 今宵の星は雲に隠れている様です、 次の紺にはまた姿を見せてくれるのだろうか 柔らかな大地から、瑞々しい木の葉から、 香る歓びのことは 早速手紙にしたためてしまいました。 この手紙をひらいて 読む姿を想像しましたところ、 あなたの指先には紫陽花の変化する、
夢見がちだったのよ、なにもかも でもそれで良かったし、今だってそれがいいのよ 曖昧なまま揺られて、私は私を辞めて 道端の草木にも、 また近所にできた新しい遊具にも、 霞んだ雲の近くを飛ぶ鳥、 電線の上を慎重に歩く、 ああ空の上は空気がうすい、 どこまでもこうして この星の元で呼吸をしていくんだわ 心の隙間に入り込む泣きたくなる寂しさには 抗えない、 そうやって私は、 私でない私は ひっそりとその感覚を味わうんだわ
ほっと吐息をもらす、桜色が記憶を辿ってゆく 行き交う人のなか、黒髪乙女、ひらりと花弁がおちた 姿を捉えようとするには少しばかり眩しすぎる、 彩りが散らばった春風すかあとの裾を軽く摘んで 足早に溶けていった、 それはほんの一時のことであった
できることならば できることならば 窓の外に見えた銀杏の葉が くるりと円を描くようにして 落ちて地に着く そのときに その瞬間に 私も 風に吹かれる浮遊を 共にかんじたまま かんじたまま 溶けたいと #2021.12.20
薄明に魅せた花は青白く その照らされた様は水中花の如く 永遠に幻のまま すみれから翡翠へ流れゆく 無色から派生した白昼夢 胸の内に秘めたまま 微かに、髪がなびいた 清い風は素知らぬふりをして 一粒の、ちいさな青をおとした 青白い光は瞼に触れる それは泡沫(うたかた)
静かなる青の、水面に映った雲の、花開く睡蓮の、暮れて深まる影の、刻一刻とかわる大気と光の神々しさの、リラの木陰にはいつしかの時の集いを、染まった乙女の頬は桃色、愛おしく眺めてまた、
なんそうにもかさねられた ちょこれえとくりいむが らずべりいに とける あまくてあまくて すっぱくて そわそわとしたわたしは おさらにうつった かげをみている じかんをかけて すこしずつ ずれていくかげは このほしがこうせいにみせるきどうだった にちぼつとともにうすれていく おと のこったのは わたしと けえきと まどごしにみえる むらさきのうみ それらのさかいめが うすれて まざって いっしょになったとき ちかくてとおい とおくてちかい せいじゃくのなか すが
氷柱や雪の結晶、 肌に触れるあのひんやりとした風が いまはとても だいじにおもえる気がするの それらは冬の花であり 静寂の物語を聴かせてくれるのよ そして蝋燭が ゆらゆらするのをみつめながら 私たちは ふかい眠りにつくのでしょうね それって とてもあたたかいことと思わなくて?