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【読書感想】渡邊渚さんのフォトエッセイ「透明を満たす」でみせる覚悟
元フジテレビアナウンサーの渡邊渚さん、いま巷で話題となっている人のエッセイ本で「女子アナ献上」や「中居正広さんの引退」など毎日のようにニュースで報道されている
ライターという職業柄ニュースのキャッチアップはしていたけれど、個人的にはあまり興味がなかった
そもそも週刊誌の話はどこまで事実なのかよく分からなかったし、示談となっているなら事実がきちんと出てくる事はきっとない
先に言っておくと、私は渡邊渚さんのことを「休養中にパリオリンピックに行ってSNSで叩かれていた人」くらいの認識しかなかった
それでも手に取ったのは彼女のエッセイのタイトル「透明を満たす」という言葉に惹かれ、何かを感じたからだ
人の心は一瞬で死ぬということ
私は過去2度病気をして、仕事を辞めて治療をしている
いずれの病気も「原因不明」で誰かのせいではなく、私のせいでもなかったから仕方ないよねって気持ちがあった
でも彼女の場合は加害者がいて、病気になってしまった
仕事に打ち込み完璧を目指し、何の落ち度もないのに被害にあって職を失う
一生懸命やっていたからこそ絶望して、苦しくて、時には自暴自棄になってしまったんだと思う
また加害者や世間が「大した事はない」と思っていたとしても、人の心は一瞬で死んでしまう
渡邊渚さんのすごいところ
まずとても言語化が上手く、文章がと本当に読みやすい
エッセイを書くときに、いつも苦戦してしまうのだけれども
自分の気持ちを言語化するって結構むずかしい
人の気持ちというものは複雑で、掴みどころがなく、ぐちゃぐちゃな状態なことが多い
PTSDならは尚のこと、言葉にするのは難しく根気のいる作業だ
でもこの本には難しすぎず、どんな人にも読みやすく、とてもきれいな言葉で書かれている
更に彼女が元から持っている芯の強さと思考に、テレビ関係者や週刊誌の記者たちも圧倒されるのではないだろうか
そんな部分を垣間見て、私は夢中でこの本を読み進めてしまいました
真実はわからないけれど
この本にはみんなが気になっている事件の具体的な話には触れていない
でも心が不安定な人、障害を持っている人、病気で療養している人、会社や他人から理不尽な扱いをしている人にはっきりとメッセージを送ってくれてしいます
あなたの人生は誰のものなのかを
たとえ傷ついても病気でも、希望がもてることを
パリオリンピックに行っていることが話題になった時
示談で9000万もらったと報道があった時
そしてこのフォトエッセイが発売されるとわかった時
SNSでは渡邊渚さんに対して「性被害にあったのにエッセイを出版するのはおかしい」「売名目的ではないか」と言っている人たちが沢山いた
その人たちにはいつか気がついてほしい
あなたたちは二次加害をしている、ただの加害者なのだと
なぜ性被害に遭ったらエッセイを、写真を、肌を出してはいけないのか
PTSDになったら海外に行ってはいけないのか
その答えがこの本には書いてあります
”書く事”が武器であり、守る事であり、治療であることを教えてくれた
私は以前noteにエッセイをひとつ書きました
発達障害というのは当事者も周りも扱いが難しく、その治療や気持ちを言葉にするのはとても難しい
書いているとPTSDまではいなかくとも嫌な気持ち、理不尽な経験をした記憶がフラッシュバックする
でも書くことで気持ちが整理されて次に進める
それを渡邊渚さんの「透明を満たす」で、書くことは治療だったんだと気がつくことができた
私は文章を武器にして、ときには盾のようにして生きてきた
でも、それだけじゃなかった
とても強くて優しい渡邊渚さんのエッセイ、ぜひ手に取ってほしいです