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ダイエットしたら痔になった話

自分がまさか肛門科のお世話になるとは思わなかった。
学生時代にみかけた菊田肛門科という名前の病院を見て、毎回鼻で笑っていた自分が、まさか自分の菊の花にトラブルを抱えることになるとは。

はじめに簡単な自分の情報を晒す。
・30代男性
・身長180オーバー
・体重95キロ
ようするにデカくて太ったおっさんである。
こんな私と結婚してもいいと言ってくれる女性が現れたので、今年の春すぎに式を挙げる予定だ。

そして現在絶賛ダイエット中。理由は当然結婚式のためである。
一生に一度の写真で出来る限り男前になる悪あがきをするために、一念発起してダイエットを始めたのだ。

ダイエットといっても基本的には食事制限のみ。
運動は疲れるからしない。

とりあえず食べたい時に食べたいものを食べたいだけ食べていた生活を辞めた。1日2食、ご飯は小さい茶碗に3分の2程度、とにかく食物繊維をとるために野菜を中心としたおかずにした。

油の多い中華や大好きだったカレー、ラーメンも絶った。
その代わりタバコは増えたけど、あれはカロリーないから問題ないはずだ。

空腹感をなくすため、とにかくサラダを食べた。
リケンのノンオイル青じそドレッシングを、買ってきたカットサラダパックにぶちまけ、主食の如く食べた。食べれば食べるほど痩せると信じて。

効果は絶大だった。
もともと100キロ前後あった体重が1ヶ月目で95キロ、2ヶ月目で90キロにまで減った。この調子でいけば20ヶ月目には俺の体重は0になるはず。
毎日体重計に乗るのが楽しみになったぐらいだ。多い日は1日4回ぐらい測っていた。あの時は完全に数字に踊らされていた。



そんな折、例のトラブルが発生した。おしりのトラブルだ。
おっきいほうをするときに激痛が起きたのである。

こんなこと俺の30年以上にわたる快便ライフではあり得なかった。
拾ったものを食べて育ってきたので、時折下痢気味になることはあったが、俺の便を阻むものなど未だかつてなかった。

今まで感じたことのない箇所からの痛み。
剣道経験者なので、頭や腕などの痛みへの耐性には自信があったが、尻はノーマークだった。
まさに頭隠して尻隠さず。

あまりの痛さに今回のおっきいほうは断念しようかとも思ったが、お腹の子は産まれたいと言っている。母親の私が諦めるわけにはいかない。

幸い、できるだけ小分けに、コンパクトに出すことでなんとか無事その場を乗り切ることに成功した。敵の戦力を分散させ各個撃破することは戦術の基本だ。我々は辛くも勝利した。

そして戦後も残る痛みに苦しみながら、改めて実感した。
「これは痔というやつだ。」と。

なにごともググってしまう現代っ子な私は、自分に発生した病がなんなのか、対処法はあるのかをすぐに検索した。

そこで判明したのがこちら。
・出血は確認できなかったので、おそらく切れ痔ではない。
・触った感じ出っ張りの様なものを確認できたのでいぼ痔ではないか。
・とりあえずボラギノール塗っとけば痛みは多少おさまる。
・完全に直すためには、病院に行くしかない。
・ひどい場合は手術。

あんなにCMやってるぐらいだから、ボラギ塗っとけばすぐ治ると思っていた。あれはあくまで痛み止めが中心で、完全に治すには病院にいかねばならない。
なにが痔にはボラギノールだよ。ふわっとした表現で俺を誤解させやがって。治してくれねーのかよ。

とはいっても今頼れるのはあいつしかいない。仕方ないので近くの薬局に駆け込んだ。
いつもいる可愛い店員さんに、お尻のトラブルを抱えている男だとは絶対にバレたくないので、ボラギと一緒にコンドームを買って特殊な性癖の人だと思わせることにした。あの娘はなにごともないかのように淡々と会計処理をしてくれた。



私は昔から薬が効きやすいタイプだ。
拾ったものを食べてお腹が痛くなったら正露丸、おしりに変なぼつぼつができたらオロナイン。これですぐに治った。さすが看護師の息子。

ご多分に漏れず、ボラギノールもすぐに効いて、痛みがおさまった。
ありがとう。悪口いってごめん。あの時は痛みで気が立ってたんだ。

なるべくお尻を清潔に保つために、アルコールティッシュで拭いてから塗布することにした。
徹底的に除菌する。withコロナ時代のスタイルである。

私のもっともデリケートな部分をアルコールで拭く時は、とんでもない衝撃が走ったが、これも痔の治療のためと我慢した。
それにこの衝撃を繰り返していったら、きっとこのデリケートな部分も鍛えられて、この痛みを克服できるのではないか、そのようにも思えていた。

のちに、これはとんでもない逆効果であることが判明する。

兎にも角にもなんとか痛みはおさまった。
治してくれないとはいえボラギのおかげですこしずつ快便ライフを取り戻していったのである。

ただ、この時ふと考えた。
食生活はいぜんより断然よくなっているはずだ。食物繊維だって前より倍以上とっている。ダイエットを始めてから痔になる要因はないはずだ。

そしてこの疑問は第二次大戦の開戦によって、その答えを明らかにするのである。


つづく。

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