高校生 8

友人はすぐにカメラ屋さんを辞めた。その後は居酒屋で働き始めた。居酒屋の社員と付き合い始めた。その人と付き合うまでいろんな人と付き合ってたけれどもれなく全員クズ野郎だった。居酒屋の店員さんはバツ1で子持ち、29歳だった。

「できてもいいって言ってくれてるんだよね。それが嬉しくて。」

馬鹿だと思った。友人は妊娠した。29歳の社員さんと結婚した。私たちは16歳だった。

生まれる日、高校が終わって母親と二人で病院に行った。産まれたての子供を見ながら、疲れ切った顔の友人が出てきた。旦那とは生まれる前に離婚した。何も相談はされなかったけれど、何かアドバイス出来るほどの知識も助けになれるような何かも私には備わって無かったから丁度良かった。他人の人生を背負うには安易な言葉しかかけれなかっただろう。16歳の私には重すぎた。「大変だった」とぐったりしながら喋る友人を見ながら、言葉にならない感情を得ていた。友人は母子家庭だった。友人の母親の姿は無かった。一人で闘って、一人で頑張って、一人で今ここに立っている。自分のことすら守れない歳で、1つの命を守りながらまた一人で闘う。そういう人生にしたのは友人だった。私たちは17歳になっていた。まだ守られるべき歳だった。

「9歳の誕生日プレゼント、何が欲しいか聞いてほしい」友人の子供は先日9歳になった。あれから9年も経つ。「いいよ、気持ちだけで大丈夫だよ。って言われたんだけど本当に私の子?笑」「本当に産んだ?w」友人が闘ってきた何年もの時間、ずっと親友だったけれど何も知らない。年末に会って、お互いの誕生日に連絡を取り合って、2年に1回位長電話をする。高校を卒業してからの8年間、お互いの苦楽を知らない。

友人は19歳の頃、お姉ちゃんの元旦那と付き合い始めた。私にも2年間隠し、2年後家族にバレたタイミングで電話がきた。何も言えなかった。19から26までの一番若くて綺麗な瞬間をその人に捧げたのに結婚はしてもらえない。その人も一回り上だった。お姉ちゃんと元旦那の間には子供がいる。子供の父親ではなく子供の従兄弟の父親だ。「子供の父親になる気はない」と言い切られ、「母ちゃんと2人で住みたい」と言われ、愛する人と愛する子供に挟まれ苦悩していた。いまだに親友だけど、こればっかりは引いてるし何度も別れることを勧めたけれど所詮は他人の人生だ。知ったこっちゃない。19に手を出しる旦那も、嫁の妹に手出してるところも、責任を取り切れないところも全部気持ち悪い。社会を知った上で意見することはした。後は勝手に幸せになってくれ。

そんな友人とずっと一緒にいると、クラスメイトと過ごす時間が純粋に楽しかったり、はたまたくだらないと思ったりする瞬間もある。

15歳から18歳までの私は劣等感と自己嫌悪と承認欲求と成長欲求ととにかく色んな感情でぐちゃぐちゃになっていた。クラスメイトが好きだった。でも嫌いだった。先生が好きだった。でも嫌いだった。授業が楽しかった。でもたまらなく嫌いだった。楽しかった。退屈だった。私の世界はとことん狭かった。




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