美容学生2
美容学生がスタートして私はより一層美容というものに夢中になった。次々出される課題に対して、毎回新しいおもちゃを出されたかのように必死に取り組んだ。
私が進学した美容学校は西日本で一番規模のでかい美容学校で、美容学生最大のコンテスト、理美容甲子園の上位常連校だった。そもそも美容学校というものは美容師国家試験を取得するための場所であり、それ以上の教育は学校の特色による。授業と別に300時間の専門分野を学べて月に1回コンテストが開かれるような学校だった。普通の美容学生がやっているようなワインディングやカットよりもウィッグを使った特殊なまとめ髪のカリキュラムが濃厚で、ストレートアップ、ストレートアップアレンジ、日本髪、夜会巻、7種類の編み込み、それ以外で専門学科の授業など毎月新しい課題に追われ、コンテストに追われた。当時そのコンテストに出るには試験で上位20位以内に入らなければならなかったが、負けず嫌いで目立ちたがり屋の私からしたらもってこいな環境だった。高校はほとんど遅刻を繰り返していたのに朝早くから学校に行き、放課後はレッスンに残り、学生マンションの実習室で遅くまで練習した。初めてのコンテスト前、ゴールデンウィークにウィッグを持って帰省して実家でもひたすら練習に励んだ。2年間、上位20位を落とすことなく模擬コンテストに出続けた。
言うまでもなく学生生活は充実していた。学生マンションでは新しい友達に囲まれて、イケイケな先輩たちにも可愛がってもらえ、調子に乗っていた。あれだけ仲の良かった彼氏とも初めて喧嘩をした。よく遊びに来る友達の中に男の子たちがいるのが気に入らないらしい。女クラスで育った私は、初めての”男女混合グループ”に浮き足立って、楽しくて、彼氏の気持ちを考えてる暇なんか無かった。「高校生じゃないんだから、付き合いもあるし同じようには無理だよ」そう切り捨てた。
思えばこの時私は持ってないものはあまり無かったのかもしれない。
楽しい友達に大好きな恋人、応援してくれる家族に教えてくれる先輩。夢中になれる夢。果てしなく広がるなりたい自分。そうなってるであろう妄想。
劣等感も虚無感も何も無い。社会もまだ知らない。現実に夢を見て、とにかく楽しくて無敵だった。そんな18歳だった。
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