膝が痛いのに走り続けるランナーには何が起きているのか⁉️
ランナーズハイという言葉を聞いたことがあると思います。
これは「ランニングなど長時間の運動を行なうと経験される一種の陶酔状態」とされています。
これは長時間の運動であれば経験されるもので水泳でも自転車でもおこるのですが、ランニング時の体験談が多いことからランナーズ・ハイと言われています。
このランナーズ・ハイは軽い強度の運動ではなかなか経験できず、その人の限界に近いペースなどで動き続けたときに訪れるようです。
ではなぜ軽い強度では起こらず、かなり強い強度でないと出現しないのか?
それはランナーズ・ハイが※「オピオイド」という脳内物質が作用する現象だからです。
※オピオイド」はアヘンを表す「オピウム」からきており、一種の脳内麻薬である。この「オピオイド」の作用は痛みの緩和。傷を修復したり炎症を抑える作用はなく、ただ痛みを感じにくくさせるのが「オピオイド」の作用。オピオイドの代表的なものが「モルヒネ」である。
限界に近い運動は人間にとって「苦痛」です。この苦痛に対して脳が反応し、苦痛を和らげるためにオピオイドを分泌する訳です。そして、この苦痛を和らげるのと同時に幸福感や爽快感が訪れるために、「どこまでもこのまま走っていけそう!気持ちがいい!」となります。
このときに分泌されるオピオイドは「βエンドルフィン」といい、間脳(視床・視床下部)から中脳中心灰白質に分泌されます。
このエンドルフィンの「エンド」は体内で生じるもの、「ルフィン」モルヒネのルヒネから来ているようです。なのでモルヒネと同様、一種の脳内麻薬となります。
このエンドルフィンはモルヒネの6・5倍とされており、相当強力な作用があります。
そのため、何度もこの「βエンドルフィン」が繰り返し分泌されるとやはり中毒になります。
いわゆる「ランニング中毒」です。
以前「膝の痛みは辛いが毎日10kmのランニングがやめられない」という患者さんと出会いました。膝の状態はかなり悪いものでランニングだけでなく日常生活にも支障をきたすほどだったので早急に何か対応しなければいけない状況でした。
整形外科のドクターからもランニングをやめるように言われたけどやめられないということで、詳しく話を聴くと走れない日はなぜか自分でもよくわからない罪悪感が湧いてきて、自分を責めてしまったり、イライラしてしまうとのことでした。走ると気分が晴れるからどうしても走りたくなってしまう。
これはおそらく麻薬の禁断症状に似たような症状が現れているのだと思います。
そのため、この方に「走るのをやめてください」と言ってもうまくいきません。
おそらく余計に走りたくなってしまうでしょう。
なので脳内で起きていることを説明し、施術とトレーニングを加えながら走ってもいいので距離を少しずつ減らしていきましょうということで進めていき、うまく膝の痛みを取り除くことができました。
精神論でやめろと言ってやめられればいいのですが、なかなか難しいケースもあるので、身体で何が起きているのかをしっかりと考えることだ大事だと改めて感じたケースでした。