運動パフォーマンスに不可欠な 感覚・知覚・認知の情報処理について どの段階の感覚トレーニングなのか
運動のパフォーマンスを高めるには、感覚機能にも目を向ける必要があります。
人は常にいろいろな刺激(情報)を感じ、脳に伝えています。その情報から状況に合わせて身体をコントロールしています。
例えば不安定な板の上でバランスを取ろうとするとき、視覚や前庭覚、固有感覚などの情報が脳へ伝わり、姿勢を変えてバランスを取ろうと全身の筋肉が働き身体をコントロールします。筋肉が働くのでこの筋肉を鍛えることは当然ですが、その前の部分の感覚をしっかり受け取り脳へ伝える機能、そして脳から筋肉へ伝達する機能も重要となります。
そのため、より正確に、より小さな感覚まで逃すことなく感じることができると状況に合わせた身体のコントロール、つまり運動パフォーマンスが向上していきます。
※このような感覚から運動を制御することをフィードバック制御といいます。このフィードバック制御の繰り返し(経験)による予測的な運動制御をフィードフォワード制御といいます。フィードフォワード制御については別の機会に触れたいと思います。
一般的に使われている「感覚」には知覚や認知といったものも含まれていますが感覚、知覚、認知は生理学的に異なります。
ここでしっかり整理をしておきましょう。
感覚とは
外界からの刺激(情報)を感じる働きのこと。目、耳、鼻、皮膚、舌などから得られる刺激で、何かの音が聞こえる、何かに触れている、何かの匂いがするなど刺激が入ったことを意識する段階。
生理学的には視覚・聴覚・体性感覚(触圧覚、温度覚、痛覚、固有感覚など)などの感覚受容器から大脳皮質の第一次感覚皮質領域に投射されるまでの過程。
ブロードマンの領域では1・2・3野(体性感覚)、17野(視覚)、41野(聴覚)にあたります。
知覚とは
入ってきた感覚について、その程度(強さや質)を区別する働きのこと。無意識的に音が大きい・小さい、硬い・柔らかい、いい匂い・臭い匂い、赤い・黒いなどそれぞれの感覚がどういう性質を持っているかを意識する段階。
生理学的には第一次感覚皮質領域から第2次感覚皮質領域への連結が起こる過程。
ブロードマンの領域では5・7野(体性感覚)、18・19野(視覚)、42・22野(聴覚)にあたります。
認知とは
過去の経験や現在の状況などから、知覚されたものがどのような意味を持つのかを理解する段階。
聞こえた音は鐘の音、アロマの匂い
生理学的には第2次感覚皮質領域から第3次連合野において統合される過程。
ブロードマンの領域では角回、縁上回周囲に当たる39・40・37野に当たります。
このように一般的に使われている「感覚」ですが、実は感覚、知覚、認知と段階的に脳で処理されています。
感覚機能を向上させようとトレーニングするときは、どの段階のトレーニングをしているのかを考える必要があります。