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あなたは何人ですか?

小学校高学年や中学生など自我が出来上がってから家族で海外移住した人と、幼い頃に移住した人 、そして移民した親の元に生まれた人

側から見れば同じように見えるかもしれないけれど、みんな違います。何かって、

自分は何者なのか、何人なのか、という事に対する認識。

私は移民大国カナダで日本人の親の元に生まれた、いわゆる日系二世です。仲の良い友達は全員違う人種で、ほとんどが子供の頃に移住した移民もしくは二世です。一世の親を持った子にしかわからない苦悩や移民としての苦労(大体みんな貧乏)などを理解しあえるから話しやすいのです。

もちろんカナダ人の友達もいるけれど、そもそもカナダ人の定義が曖昧なので・・・ざっくり説明すると、カナダとアメリカは昔、フランスとイギリスに占拠され、元々住んでいた先住民、アボリジニは狭い土地に追いやられ、大量にフランス人やイギリス人が移住してきました。アメリカやカナダに数代に続き住んでいる欧米人の多くは、この人たちの子孫と言うことになります。

私は、ゆる〜く、カナダに移民した人はみんなカナダ人でいいんじゃないと考えていて、自分のことをバナナだと思っています(外は黄色で中身は白いと言うことです。こういった人種ジョークは本人だけがネタにしていいという暗黙のルールがあるので決して本人以外が言ってはいけません、ボッコボコにされます)が、それは私の中だけの認識で、他の人はそう思わないかもしれません。

高校生の時、戦争について討論するという授業があり、先生に親が日本人だとバレると、無理やり第二次世界大戦の広島と長崎に落とされた原爆について話し合うチームに入れられました。それぞれの意思とは関係なく「賛成」「反対」チームに別れ、リサーチをして、感情論は抜いて実態に基づいて論破しあう、というものです。

「原爆はたくさんの人に悲しみと苦しみをもたらした」

「それは感情論だ、あの時はそれしか手がなかった」

「本当に他に手はなかったのか?たとえばこうすれば良かったのでは?」

「それは現実的ではない、当時の政治は・・・」

こんな感じで、お互い順番に討論してききます。

論破合戦が終わると、先生は憤慨した様子で、私に「なんでもっと日本人目線で発言しなかったの!」と言ってきました。私はカナダでしか教育を受けたことがないので、みんなが教科書を通して知っていることしか知らない、と言うと、「祖父母がいるでしょう、聞けば良かったのに」と言われたので、カッとなり、思わず「みんな死んでます!」と叫んでしまい、なぜかクラス中が笑いに包まれました。

祖父母が全員早くに亡くなっていて会ったことがないのは真実だし、親戚に至っては名前どころか何人いるのかも知りません。土曜日に通っていた日本語学校の教科書も国語だけなので戦争の話はあまり出てきません。その後親に報告すると、「地元でもないし、祖父母も戦後生まれだから自分達もあまりわからないなあ」と首を傾げながら言われました。

この後、中国人のクラスメイトから「戦争のこと知らないの!?日本と中国の歴史も?日本の教育では本当のことを教えないっていうの本当だったんだ!ひどい国だ!」と怒られました。解せぬ。どうして日本に行ったこともない私が日本人代表として扱われるの?

また、やはり高校生の頃、ボランティア(カナダでは福祉活動は大学入学や就職する上で非常に有利に働くのでみんな積極的にボランティアをします)で留学生向けのESL教室の手伝いをやっていた時、同じくボランティアの別の高校に通う男子に、「俺日本人の女の子好きなんだよね」と言われました。最初は本気で理解ができなくて、「ふーん、うちらの担当クラスは韓国からの留学生だから惜しかったね(?)」と返事をしました。そして数日たったある日、その子が残念そうに「お前あんまり日本人ぽくないよな」と言ってきたのです。やっぱりあまり理解ができなくて、「そりゃそうでしょ、私カナダ人だし。日本人なのは親だよ。」と返しました。

このエピソードをこないだポーランド出身の友人に話したところ、「私はちょっと違うかな。カナダ人でいる時間は学校に行っている6時間だけで、そのあとはずっとポーランド人として生きてたから。6歳までは住んでいたしね。」と言われ、みんな認識が違うんだなあ、となんだか関心してしまいました。

私はずっと、親は日本人、兄と自分はカナダ人だと思って生きてきました。アジア特有の文化との違いが大きかったから、と言うのもあるのかもしれません。例えば、クラスメイトの子達が親にハグやキスしてもらっているのを見て、「なんでうちはしないの?」と聞くと、「日本人にはそういう文化がない」と言われるし、母親の愛想笑いが気持ち悪くて「なんで怒ってるのに笑うの?」と聞くと、「本心を隠すのが日本人」と言われ、あまりにもかけ離れた価値観を理解出来ないことがたくさんありました。嫌々カナダに渡った母はカナダ文化に全く馴染もうとせず日本ばかりを褒めるので、「なぜ私の母国の悪口を言うの?」と、嫌な気持ちになることも。母親も、中身が欧米人の子供達の考えを理解できず、お互いかなり深い溝が出来ていたと思います。

日本の文化を理解できない。だけど世間からは日本人として扱われるジレンマ。

日本人の定義ってなに?私は何者なんだろう

単身日本に渡ってから10年、文化や歴史にたくさん触れて、政府や政治のことを勉強し、行動や発言の背景を知って、日本人に対する理解は深まったと思います。カナダにいた時に居心地悪く感じていたことが、日本に来て「そうだよね!そういう考え方あるよね!」って共感することもたくさんあります。

自分は何者なんだろう、という問いに関しては「自分は一生宇宙人」という結論で納得はしているのですが、

コロナが流行り始めてからしばらく話していなかった地元の友達が何人も連絡を取ってくれて、「で、いつ帰ってくるの?」と聞いてくる質問の返事だけは、まだ悩み中です。

選べる立場というのはつまり、いずれどちらかの国を捨てる覚悟を持たなくてはいけないということです。

まだ、どっちも持っていたい!というのは、わがままなんでしょうね。


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