Olles skidfärd(ウッレのスキーのたび)
※ Instagram からの転載です
作:Elsa Beskow(エルサ・ベスコフ)
第3版・印刷年詳細不明(発表:1907年)
クリスマスが直接的なテーマではないけれども、冬をテーマとした絵本ということで「Olles skidfärd(ウッレのスキーのたび)」。
自然のなかで繰り広げられる夢想的なストーリーは、ベスコフの出世作となった「ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん」や「リーサの庭の花まつり」など彼女の作品に多く登場する展開ですが、この作品は雪の森が舞台です。
6歳を迎えたお祝いにウッレくんはあたらしいスキーをもらいました。森のなかをスキーで進んでいると、真っ白な姿をしたおじいさんが。このおじいさんの後についていくと、冬の王様の下へたどり着きました。
日本でもこの作品はフェリシモ出版からは「ウッレのスキーのたび」として、そして徳間書店から「雪のおしろへいったウッレ」として翻訳版が出版されていますが、原題は前者の「ウッレのスキーのたび」という意味です。
詳しい印刷年は特定できませんがスウェーデン国立図書館のデータベースによると、初版が1907年、第4版が1940年なので、その間につくられた絵本と推測されますが、おそらく1910年代から1920年代に印刷されたものだと思います(第3版の出版年の情報記載なし)。
スウェーデン語版も日本語版も、いずれも現在でもこの作品を手に入れることは難しくないですが、現在印刷されているものは当然ながらデジタル印刷です。デジタルデータを読み込ませれば、そのデータに従ってシアン・マゼンタ、イエロー、ブラックのインクを紙に転写して色を再現します。
この「ウッレのスキーのたび」は雪の森が舞台なので、当然、雪を描くのに白が使われています。うまく理論的に説明できない感覚的なものですが、この本にはデジタル印刷には出せない白を感じるのです。白がとても活き活きしているというか、スーパーの見切り品の刺身と、陸揚げされたばかりの魚を捌いた刺身くらいの差を自分は感じます。
もし誰かに古い絵本の素晴らしさがどこにあるかと尋ねられたら、自分は1900年代前半に印刷された「Olles skidfärd」と、2000年代に印刷された「Olles skidfärd」を見比べてほしいと思います。わかるヒトだけわかればいい世界ではあるけれども。
絵本の作者だけでなく、印刷屋さんや製本屋さんにも拍手を送りたくなる時代の本って、素晴らしい。それもあって、さらに次世代に繋いでくれる方、もしくは墓場まで持っていく覚悟のある方にだけ届く価格になっております。