「水甕」の一首

これは、今まで発表された作品の中から毎月1首だけ引かれて、「水甕」表2(表紙の裏頁)に、寸評と共に書かれる注目歌。
それに7月号には私の歌が選ばれました。
評を書いて下さったのは、「水甕」代表の春日いづみさんです。
とても光栄なことなので、読んで頂けると嬉しいです。

映像は容赦しないさラハイナの街に転がる炭化した犬
                シンタニ優子 「水甕」2023年12月号

昨年8月、ハワイのマウイ島では大規模な山火事が発生、4日間燃え続け多くの死傷者を出した。送電線が出火原因とみられ、強風が火災規模を拡大した。観光地ラハイナは焼け野原と化したが、その様子を伝える映像にまっ黒に炭化した犬の姿を見た。作者の衝撃の大きさが伝わる。画面に映ることの禁じられた、同じく炭化した人体が想像されるからだ。まさしく「映像は容赦しない」空前の自然災害を「海山の呼吸を乱して幾年か風神激しく火を連れて来る」と詠む。「海山の呼吸」を乱すのは人間の所業。風神は人間に気づきをもたらす為に働くとの前提に立つ。シンタニ優子の眼差しは時に深く鋭く、時に慈しみに満ち、細やかである。        (春日いづみ)