陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#02

目的の場所がある繁華街まで電車で1時間ほど。
私はサラリーマン風のスーツ姿でキャリーバックを引いている。
駅にも電車内にもキャリーバックを持った男性は他にもおり、自分だけがとりわけ目立った存在ではないことに安堵した。
まさかこの中に女性用の衣類が詰め込まれているなど誰が想像できるであろうか。

目的地の場所は繁華街のとりわけ「夜の街」といったエリアにある。
かつて私は男性、いわゆるB面でそこを尋ねたことがある。
結果はと言うと誰にも話しかけず話しかけられもせずただそこにいただけで、足早にその場を後にしたのだった。
自分から動かなければ何も起きるはずもないのだが、話しかけるにも声が出てこないのだ。

「やっぱりお前みたいなやつはどこに行ってもダメなんだよ」

心の中の意地悪な自分が嘲笑う。


「現場」に着いた頃には夜の9時を回っていた。
以前来た時には誰かに知られるのではないかという不安から扉を横目で見ながら何度も行ったり来たりしていたが、今日は躊躇いなく扉を開く。
受付で「女装」側の料金を支払う。
もう行くしかない。
廊下で男性がこちらを見ている。
お前は「どちら」なんだと聞かれている気がした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?