入江遥

小説を書き始めました。 書かれていることは全てフィクションです。

入江遥

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最近の記事

前日譚1_女装発展場に初めて行った話

はじめに この物語はフィクションであり、登場する人物、場所は全て架空のものです。 作中の表現並びに人物の言動は作者の意見を代弁するものではありません。 また、作中のいかなる言動も推奨する意図はありません。 1月半ば、新年の喧騒も落ち着きを見せた頃、私は一人部屋のベッドで動けないでいた。 別に体調が悪い訳ではない。動く気になれないのだ。 冬の寒さは私にベッドから出ない理由を与えてくれる。 暖かい布団とスマートフォンは私を優しく、それでいて強固に束縛する。 何もしたくな

    • 陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#あとがき

      あとがき この物語はフィクションであり、実在の人物、場所とは一切関係がありません。 当然、ストーリーも作者である僕の想像ですが、主人公には共感できる部分があります。 それは自分の中に秘めていたものを解放し、人に認めてもらいたいという欲求です。 主人公が「エリカ」を認識してもらいたく発展場へ出向くように、僕もこの作品を認識してもらいたくここで公開したということです。 本来であれば自分のためだけの秘め事。 それを公開するという意味ではこの作品が僕にとっての「エリカ」という

      • 陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#11

        ティッシュで精液を拭き取りながら雑談を始める。 ピロートークと呼んで良いのだろうか。 タケシはここから幾分遠いところに住んでいるらしい。 ここにはしばらく来れそうもないそうだ。 彼は私と同じく独身。 自身の持つ性癖のため地元から遠く離れたここで相手を求めたらしい。 私は彼が他人とは思えなかった。 独り身で性癖が普通の人と違う。 A面のエリカが人に求められたいように、B面の私は人を求めていた。 あの時一人、B面でここに来た自分を思い出す。 私は誰かを求めていた。 私はタケ

        • 陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#10

          ※性的描写が含まれます ジュポン…… タケシのアヌスから私が抜き取られる。 私は仰向けに寝たまま射精後の余韻に浸る。 脳が冷静さを取り戻しつつあり、男性と性行為に及んだという事実を突きつける。 起き上がれないままでいるとタケシは私のペニスからコンドームを外し、ティッシュで拭いてくれた。 優しい人だと思った。 彼は最後まで私が嫌がる事はしなかった。 蔑むような言葉も使わなかった。 そして何度もかわいいと言ってくれた。 私はというと受け答えもろくにせず、笑うこともなく

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#09

          ※性的描写が含まれます 「どこが感じるの?」 タケシは尋ねた。 「乳首……」 「じゃあ触るよ」 膨らみのない胸をタケシが撫で始める。 いきなりは乳首に達しない。 ゆっくりと周りから責めていく。 「あっ……」 エリカとしての吐息が漏れる。 私の乳首は一般男性のそれよりも敏感で乳首だけでも快感を得られる。 指が乳首を弾く。 「んっ……」 電流の様に多幸感が押し寄せる。 上半身は女性としての愛撫をされながら下半身は男性としての準備を始めている。 先端からは既にカウパ

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#09

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#08

          彼は自分をタケシと名乗った。 ここに来るのは初めてらしい。 個室の扉を開く。 一瞬血の気が引いた。 ローションとシリンジ、そして男性器を模したゴム製品が置かれていた。 「女装子ってことはやっぱりウケなの?」 私は危機感を覚えた。 「後ろはちょっと無理……」 これについては断ることにした。 実際そういった経験がないわけではない。 自慰においてそういう器具を用いることもあり、本物もニューハーフヘルスで経験済みだ。 だが「男性」を受け入れるには覚悟も経験も足りていない。 タ

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#08

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#07

          私はトイレで用を足すと手洗い場の鏡の前に立った。 鏡の中にはエリカがいる。 不思議だ。 数時間前まで世界中どこにも存在していない女の子が、いま実態を持った形で存在している。 エリカと名乗りその存在を認知されている。 まるで魔法のようだ。 だがその魔法ももうすぐ解ける。 12時を過ぎたシンデレラのように元に戻るのだ。 陰キャ、ぼっち、非モテの男に戻る前にもう少しだけエリカの姿を眺めていたい。 私は時間を忘れてしばらくの間、鏡の前から離れられないでいた。 その時だった。 ガチ

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#07

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#06

          彼の名前はキョウ、一緒にいた女装子はナツメと名乗った。 もちろん本名のはずはない。 私もエリカと名乗り雑談に興じた。 コミュニティスペースは飲食ができ、ナツメは先ほどからレモンサワーをあおっている。 私は女装子として話すのも他の女装子と話すのも初めてだった。 女装子ならではの赤裸々な体験談でも聞けるのかと思ったが意外とその手の話は少なかった。 時事ネタ、ミリタリー、バイクなど会話の内容は男同士のそれとそう変わらない。 むしろ女装子は女装以外の趣味は男っぽいのではないかと感じた

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#06

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#05

          廊下の先にあるコミュニティスペースへ向かった。 そこは女装子と男性、または女装子同士が交流を深める場で、マッチングが成立したら個室で「発展」に至るのだ。 私が入ったときにはすでに2組のペアがおり、一人は私だけだった。 先ほどの男性はついてきていないようだ。 私は胸を撫で下ろした。 端の席に座ると設置されているテレビの映像を眺めた。 程なくして男性と女装子のペアが入ってきた。先ほどの痴漢男ではなく二人は顔見知りのようである。 男性が私に気がつくと声をかけてきた。 私は咄嗟に身

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#05

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#04

          彼女の名前は「エリカ」 私の中のもう一人の私。 名前の由来は色々あるが、元の名前と似つかない名前にしたかったのが一つ。 これからしばらくの間、私はエリカとして人に会いエリカとして受け答えをする。 他人は私をエリカとして認知する。 エリカはもう自分だけのものではなくなるのだ。 廊下には男性が一人いた。 先ほどこちらを見ていた人だろうか。 私は目を伏せてその横を通り過ぎようとした。 その時だった。 !!? 男性がすれ違い様に私の臀部に手を触れたのだ。 私は足早に通り過ぎる。

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#04

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#03

          個室に入って鍵をかける。 少し息を整える。 キャリーバックを開けて着替えを取り出す。 これから私は「彼女」になるのだ。 今まで自分の部屋でしかしたことのない行為。 今それを繁華街の一室でしようとしているのだ。 わずかに震えるのは不安感と高揚感どちらからだろうか。 下着まで着替えるには一度全裸になる必要がある。 それはまるで男性性を脱ぎ捨てて新たな性別に生まれ変わるための儀式のようであった。 全裸になったとき胎内回帰したかのような感覚を覚えた。 ショーツに足を通す。 自らの男

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#03

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#02

          目的の場所がある繁華街まで電車で1時間ほど。 私はサラリーマン風のスーツ姿でキャリーバックを引いている。 駅にも電車内にもキャリーバックを持った男性は他にもおり、自分だけがとりわけ目立った存在ではないことに安堵した。 まさかこの中に女性用の衣類が詰め込まれているなど誰が想像できるであろうか。 目的地の場所は繁華街のとりわけ「夜の街」といったエリアにある。 かつて私は男性、いわゆるB面でそこを尋ねたことがある。 結果はと言うと誰にも話しかけず話しかけられもせずただそこにいただ

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#02

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#01

          はじめに この物語はフィクションであり、登場する人物、場所は全て架空のものです。 作中の表現並びに人物の言動は作者の意見を代弁するものではありません。 また、作中のいかなる言動も推奨する意図はありません。 「良い娘は天国へ行ける、悪い娘はどこへでも行ける」 アメリカの女優、メイ・ウエストの言葉が好きだ。 どちらにもなれない私は部屋から出られないでいる。 そもそも私はどこへ行きたいのか。 わからないけど、どこかへ行きたい衝動は依然として燻り続けている。 金曜日の夜、仕事を

          陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#01