陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#04
彼女の名前は「エリカ」
私の中のもう一人の私。
名前の由来は色々あるが、元の名前と似つかない名前にしたかったのが一つ。
これからしばらくの間、私はエリカとして人に会いエリカとして受け答えをする。
他人は私をエリカとして認知する。
エリカはもう自分だけのものではなくなるのだ。
廊下には男性が一人いた。
先ほどこちらを見ていた人だろうか。
私は目を伏せてその横を通り過ぎようとした。
その時だった。
!!?
男性がすれ違い様に私の臀部に手を触れたのだ。
私は足早に通り過ぎる。
一瞬ではあったが確かに触られた感覚があった。
女性に対してであれば決して許されない行為だろう。
だがここは女装発展場である。
ある程度のことは承知の上である。
一抹の嫌悪感と共に感じたことのない感情が芽生えた。
「欲望の対象にされている」
男性での人生で今まで味わうことのなかった感覚だ。
私は彼に何かしてあげたこともないし、話したこともない。
ただ「そこにいただけで求められた」のだ。
世の女性の多くは男性からのこの視線に思い悩むことがほとんどだろう。
だが私は今までの人生において、陰キャ、ぼっち、非モテで生きてきた。
そこにいるだけで求められるなど180度違う感覚である。
それは承認欲求を刺激するのには十分だった。
これに味をしめて過激な行動にのめり込んでしまうことも十分にありうる。
だがそれと同時に恐ろしさも感じた。
この次は触られるだけでは済まないかもしれない。
私の性的指向はあくまで女性である。
それならばなぜここに来たのか。
なぜ「エリカ」をここに連れてきたのか。
求められたかったのだ。
私だけのものだったはずのエリカを人々に認めてもらい「かわいい」と言ってもらいたかったのだ。
この先に進めばそれ以上のことが待っているかもしれない。
行ってやろう。
今日は悪い娘になってやろう。
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