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株式会社ニッポン手仕事図鑑 堀山 結花さん ~「好き」を貫き、「好き」を仕事に~

概要
「LiLi teens Project」インタビュー企画第一弾!伝統こけしを愛し、「好き」を仕事にされていらっしゃる、株式会社ニッポン手仕事図鑑、堀山結花さんにインタビューさせていただきました。今回はLiLi teens Projectから、就活を終えたばかりの大学4年のメンバーと、進路選択に悩む高校2年のメンバー2人で取材!
「好き」を仕事にするまでの裏にある困難や葛藤、それらをどうやって乗り越えたのかまで詳しく伺いました。「好き」が見つかっていないあなたにも、「好き」をどう守り抜くのか悩んでいるあなたにも、ぜひお届けしたい言葉をたくさん詰めました...!

写真左から、LiLi teens Projectメンバー大学4年田中、株式会社ニッポン手仕事図鑑堀山さん、
LiLi teens Project メンバー高校2年三上

株式会社ニッポン手仕事図鑑
「ニッポンの手仕事を、残していくお手伝いがしたい」という想いの元、2015年に始動。「日本でいちばん、職人を愛するメディア」として、日本の職人の技術や文化を動画で残す『ニッポン手仕事図鑑』を企画運営する会社。その他にも、『伝統工芸後継者インターンシップ』や『職人向け入門講座』の企画運営なども実施。日本全国の職人さんのために本当に必要なことは何か、を追求して日々事業拡大をしていらっしゃる、唯一無二の会社。

株式会社ニッポン手仕事図鑑 ホームページ
https://nippon-teshigoto.jp/

 堀山 結花(ほりやま ゆか)さん
東京出身。幼少期より伝統こけしを愛して、毎年夏休みは東北にこけしを買いに行くという日々を過ごす。高校は進学校で、周りと共に国立受験をするも、本当にやりたいことではないと思い直し、卒業後に進路を変更し、東北芸術工科大学に進む。伝統こけしを守るという夢を叶えるため、「ニッポン手仕事図鑑」のデザイナー兼プランナーとして伝統工芸の職人たちに寄り添い続ける。

「日本で一番職人を愛する会社」


田中)まずは、堀山さんの所属されている「ニッポン手仕事図鑑」さんについてお話を伺いたいと思います。簡単にどのような事業をされいらっしゃる会社なのか教えていただけますでしょうか。
 
堀山)「ニッポン手仕事図鑑」というのが、2015年1月にスタートした動画メディアになります。「手仕事図鑑」として日本の手仕事に焦点を当てているのですが、伝統工芸を後世に残していくために、よくあるのは、動画で技術を残そうとするもので。でもやっぱり、職人さんの声だったりとか思いみたいな部分が、これからに残していくためには重要だっていう職人さんの声もあって、 ちゃんと声を届ける動画メディアをやっていきたいっていう思いがあって誕生したのが「ニッポン手仕事図鑑」です。
 
 
田中)ホームページなどを見させていただくと、「後継者インターンシップ」や「アワード」などさまざまな取り組みをされていらっしゃったのですが、そういった背景でやられているのですか?
 
堀山)最初は動画メディアとしてスタートはしているんですけど、全国各地の職人さんのところにお伺いさせていただいて、色々お話を聞いてるうちに、いろんな課題とか聞くことが多くて。その課題をもとに私たちが行動していく、みたいな流れでスタートしました。例えば、SNSとかネット関係のものって、やっぱり職人さんは疎かったりとかもあったので、職人さんに向けたオンラインショップの制作講座やSNS入門講座を始めました。依頼をされたら、もうなんでもやるって言ったら変ですけど、自治体の方々とかとも協力するなど、いろんな試行錯誤しながらサポートさせていただく幅はどんどん広げていきたいなと思っています。
 
 
田中)一番根本にある想いや、会社の理念とはどういったことになるのですか?
 
堀山)私たちが掲げているのが、「日本で一番職人を愛するメディア」です。基本が本当に職人さんファーストで動いているので、例えばインターンシップとかも、この時期にこういうことやった方がいいとか、ノウハウはもちろんあるので、そういうお話もさせていただくんですけど、何よりも重要なのは職人さんの意向だったり思いみたいな部分。例えば人材像とかもしっかり聞いて、そういう人たちが集められるように、私たちがしっかりと 募集内容を決めていくといった形で、何事にも職人さんファーストで動いていくというのが結構大きな指針かなと思います。

「職人になりたいけど、なれなかった人たちを繋ぐ」


 
田中)応募の多くが女性が多いとのことだったのですが、何か理由とかってあるんですか?
 
堀山)明確なこれです、っていう理由はないんですけど、今、手仕事とか自分の手で何かを作るみたいなことに興味をもっているのが、圧倒的に女性が多い傾向にあります。力仕事とか、いわゆる工事現場とか、建築系とかも、もちろん男性が多いんですけど、そういうところでも少しずつ女性の職人さんも増えてきたりもしています。
 
 
田中)建築系とかだと、やっぱり男性社会っていうイメージがあるのでびっくりです。
 
堀山)今までは女性が入りにくい分野ではあったんですが、最近はいい意味で機械化とかも進んでたりするので、そういうところで参入がしやすくなってるのもあるかと思います。参加者の方からも、女性も応募できそうな求人を見たのが初めてでした、みたいな言葉もいただいたりもします。実はやりたいって思ってたけど、入りにくい業界だったってだけ、みたいな。
 
 
田中)確かに、勝手なイメージから入りにくく感じていただけなのかもしれないです…。
 
堀山)そうなんです、実は色々調査してみると、学生さんとか結構職人になりたい人はたくさんいるけれど、なれてない状況だということに気づいて。私たちの会社だと、ものづくり系の学校と140から200くらい関係性があるんですが、伝統工芸の専門学校を例にとると、みんな職人さんを目指して入学しても、9割は職人になれずに卒業しちゃうみたいで。それくらい求人も少ないし、狭き門で、なりたい人がいてもなれない。だから、そういう人たちに自分のやりたいことを仕事にしてもらう、っていうのも結構大きな軸としてあって。後継者不足に悩んでる職人さんたちと職人になりたいって思ってくれている若者を繋ぎ合わせる、マッチングさせる、というのが後継者インターンシップの目的です。
 
 
 
やっぱりやりたいことをやるために浪人して美術大学に
 
三上)ここからは、堀山さんご自身についていろいろとお話を聞かせていただけたらと思います。私自身、ちょうど高校2年生で進路を決めている時期なんですが、サイトの方で東京出身と拝見したのですが、そこから東北の大学に進学されたのはどうしてですか?
 
堀山)実は、浪人して東北の大学に入っていて。実は、「伝統こけし」っていう東北地方の伝統工芸が小学生の時から大好きで、夏休みは必ず東北に旅行に行ってこけしを買うみたいな生活をずっとしていて、だからもう漠然と東北に住みたいみたいなのがあったんです。なので、一回目の受験では、まずはこけしの産地である東北に住みたい、というのを優先して東北の国立大学を受験したんです。
 
 
三上)初めは国立大学を受験されたんですね。
 
堀山)高校がいわゆる進学校だったから、みんな一般受験するのが当たり前だと思ってたし、こういう学校に行くべきだみたいなのがすごい強くて、それでも東北行く方法って国立大学に行くしかないよなと思って受験はしたけど、自分の中で全然やりたいことじゃなかったんです。こけしのことはもちろん、デザインや美術系をやりたいと思っていたのに、東北に住むことが優先されちゃって、いい判断ができなかった。だからこそ、納得ができずに浪人することを決めました。
 
 
三上)それからやっぱり芸術系の大学に進むことを決められたんですか?
 
堀山)そこからはもう親とのバトル。(笑)お金とかの工面をしてくれるのは親だからこそ、どうしても美術大学に入りたい、かつこけしの研究したいというのをしっかりと話しました。そしたら、母親に「これ言ったら絶対あんた行くって言うから言いたくなかったんだけど」、と言いながら、山形の美術大学を紹介されました。それでもうそこからすぐオープンキャンパス行って、すぐ情報収集して、山形から弾丸で帰ってきて、もうすぐ受験みたいな流れでした。
 
 
 
自分が必死になれることってなんだろう
 
三上)どういうきっかけで「ニッポン手仕事図鑑」さんへ入社を決めたのですか?
 
堀山)実は、私は覚えてないんですけど、この会社を大学の時に教授から紹介されてたらしいんです。前職でデザイナーをやっていたんですが、単なるデザインをやりたかったわけじゃないなって思ってて。自分がなんかこう必死になれる会社ってなんだろうって思った時に、やっぱりずっと小学校の時から好きだったこけしとか、伝統工芸に関われることだって気づいたんです。
 
 
三上)ここでこけしや伝統工芸と繋がるんですね!
 
堀山)1番熱意持ってできるし、 熱意持ってやれることって、どんなに大変でも嫌な思いしないんですよね。なんか頑張れちゃうから。そういう、自分がこう、何か1つのことに熱意を持ってやれるって、多分普通のことじゃないのかなと思って、そういう会社を探したみたいな。その時期は、「伝統工芸 プランナー  求人」とかをずっと調べてて、最終的にこの会社のホームページの求人にたどり着いた感じです。
 
 
三上)入社の決め手みたいなところはあったんですか?
 
堀山)求人に熱意があれば未経験でも可って書いてあったんです。(笑)しかも選考過程で作文を書くんですよ。毎回テーマが違って、私の時は「ニッポン手仕事図鑑として伝統工芸の業界にできることは何か」みたいなテーマで。他の会社だと、書類選考とかってやっぱり学校とか経験を見られちゃって、特にデザイナーをやってた時は、デザイナーとしての実務経験3年以上とかいっぱい書いてある中で、文章を書くのも好きだし、想いを見てもらえるっておっきいなと思ってそこが1番の決め手でした。

「デザイナーになったのは「好き」を守るため」


 
三上)こけし職人になりたいとは思わなかったんですか?
 
堀山)そう思いますよね。(笑)伝統こけしって、東北地方に12系統あって、しかもその中から細かく分布があって、職人になって1つを継いでしまうと、そのこけししか残せない。だったら、全部の伝統こけしを助けられる方法はないかと思って、今の会社みたいな活動をしたいって思ったのがはじまりでした。デザインを学んでおけば、職人さんの発信とかに役立てるなと思って、そのためにデザインを学んで力をつけていこうってなりました。
 
 
三上)そこまで好きっていう想いを持ち続けられるって、単純にすごいなって思いました。
 
堀山)なんかそれ、職人さんにも言われるんですよ。お前は変態だ、って。(笑)小さい頃に何かに没頭する子っていっぱいいるらしくて、でも部活とかいろんなことをやってるうちに、 知らぬ間になくなってしまう。でも、私の場合は生活のすべてをこけしにするというよりも、年に1回だけのこけしの旅でゲットできるものだったからっていうのもあって、少しずつ少しずつ集めていくみたいな感覚があったから多分続いてるのかなって思います。でも多分私何事にも一途な性格っていうのもあると思います。(笑)
 
 
三上)何がきっかけでこけしが好きになったんですか?
 
堀山)昔山形に、山形伝統こけし館っていうこけしの博物館があったんです。そこで小学校3年生の時に、とあるこけしを見つけて、もう泣くほど欲しくて暴れて暴れて。(笑)そんな時に学芸員さんが、「これは貴重なコレクションで、亡くなってる方のこけしだからすごい貴重なんだよ」って、しっかりと話をしてくださって。なんかこういう出会いができるなら集めてみたいなって思ったし、なくなっちゃうものなら今集めるしかないって思って集め始めたんです。
 
 
三上)運命的な出会いだったんですね。(笑)
 
堀山)そう!(笑)だからこう、好きというよりは、なんかもう、出会いに行くみたいな感覚。生活の一部みたいな。ご飯食べて風呂入って寝るとこけし買いに行くみたいな。それを数十年間で培っちゃったって感じですね。(笑)
 
 
 
自分の本能的に大切にしたいことを考える
 
三上)「好き」を仕事にできるって、本当に幸せなことだなって思うんですが、一方で、だからこそこれまでに大変だったことなどを聞いてもいいですか…?
 
堀山)大変だったことはいっぱいあるな。でも本当になんか高校生の時って、周りが色々とサポートしてくれるからこそ、周りからの意見もすごくあって。結構私は自我が強いというか、自分の意見をしっかり持つタイプなんですけど、その時はもう東北に行きたい、だけしか自分の想いを守れなかった。今思うと、もっと自分の大切にしたいことを大切にすべきだったなってめちゃくちゃ後悔してます。
 
 
三上)自分の意思を貫くって、分かってはいても難しいですよね…。
 
堀山)そうそう…。自分の意志や軸がどこにあるのか、みたいなのを守っておくのが1番大変だった。やっぱりなんとなく親にいいよって言われたから行くとかあるじゃないですか、どんな人でも。その感覚がちょっと高校生の時は強かった。8時間授業をしてから2時まで勉強して、朝6時に起きてみたいな生活してたら、もうなんかそれが当たり前なんだなって、洗脳状態になっちゃってて。
 
 
三上)やっぱりこけしが好き、っていうところにたどり着けたのは、なにかきっかけはあったんですか?
 
堀山)こけしはずっと生活の一部として好きだったんですが、浪人したくらいに、自分の手でもなにかこけしに対してできるんじゃないかっていうことに気づいて。高校時代はがむしゃらに勉強をして忙しかった分、浪人時代に時間的な余裕ができて、ちょっとこのイベント行ってみよう、みたいなのが増えたんです。外を見る機会が増えて、いろんな人たちのいろんな活動を見て、実は好きなことって、仕事にもできるし、研究とかもできるんじゃないかって思ったんです。だったら、自分のやりたいことができるところを探そうって思えてきて。やっぱり、そういう、自分を見直す時間みたいなのができたのが1番だったのかな。
 
 
田中)いや、そうですよね。私も就活ってなった時に、やっと自分を振り返る時間ができて自分の好きなことに初めて気づけて。だからこそ、高校生にも早いうちから自分の「好き」を見つけようとしてほしいなと思ってLiLi teens Projectに関わってます。
 
堀山)自分を振り返るって大切ですよね。自分はまずそもそも何がやりたいんだっけ、みたいな。もう根本に戻ること。できる、できないじゃなくて、何がやりたいかみたいなのを優先してほしい。例えば、めっちゃ休みたいとか、めっちゃお金が欲しいとかでも全然いいと思うんですよね。私みたいに、何か明確な「好き」を仕事に、みたいなこう格好つけたものじゃなくてもいいから、推しにお金を使いたいからお金を稼ぎたいとか、ライブ行きたいから休める会社がいいとか、そんなことでもいいから、そのために何ができるか、みたいなのが逆算できるのが1番ベストだなって、社会人になってから気づきました。
 
 
三上)素直に、自分はどういうことが好きで、どう生きたいかを考えればいいんですね。
 
堀山)そうそう。自分の根本を見つめ直すのが1番いいなって今は思う。そういうと、やりたいことないんだよなっていう人結構いるけど、本当に本能的にやりたいことでいいんだよって強く言ってあげたいなって思います。だからもう本当に、楽して生きたいとかでもいい。そのくらいのものでもいい。伝統工芸のために頑張りたいんです、とかじゃなくてもいい。自分の素直な気持ちを見つめ直すっていうのは、今の高校生には1番大切にしてほしいなって思います。
 
田中)そういう話をめちゃくちゃ発信していきたいって思いました。やっぱり、なってから、やってから、じゃないと分からないことが多くて、だからこそ早いうちに高校生に伝えたいなって。
 
 
三上)「好き」を貫くのか受験するのかですごく葛藤されたかと思うんですが、そういう場合ってどうしたらいいんですかね...?
 
堀山)まずは話すのが1番かなって思ってます。私は、本当は美術系に行きたいことを周りに一切言えずに高校3年間過ごしちゃって、普通に一般受験するんだよねって当たり前に思われていたので。だからこそ皆さんには、自分の人生の判断に関わる人には、自分のやりたいことや考えてることを話してみてほしいなって思います。私は親と話すタイプだったんですけど、その時は受験に必死だったからこそ、お互いうやむやなままになってしまっていたので、会話とか、コミュニケーションは重要だったなって思います。
 
 
田中)やっぱり、伝えることって大事ですよね。
 
堀山)伝えてみて、これはダメ、あれダメって言われたら、その中でどう切り抜けるか、みたいなのをずる賢く考えるのも1つ。私は結局ずる賢くいけずにそのままこれがやりたいって無理言っちゃったような感じですけど。(笑) 黙ってたらわかんないこととかを、しっかり話すのは重要だなって思います。

 「伝統工芸の光になる」


 
三上)そうしましたら最後に、「なりたい’わたし’を見つけるLiLi teens Project」にちなんで、堀山さん自身の夢を教えてください。
 
堀山)そうですね、すごくざっくりとしているんですが、「伝統工芸の光になる」ですね。広報とかデザイナー、プランナー、いろんな分野を担当させていただいてるんですけれども、まずは、こういうことをしてくれる人がいるんだっていうことを職人さんに知ってもらいたい。そして、私たちの活動を通して、職人さんが「伝統工芸を後世に残していきたい」とかプラスに思ってもらえるような存在になりたいなと思い、「伝統工芸の光になる」にしました。
 
田中)素敵です!まずは、職人さん自身に知ってもらう、というところが大切になってきますね。
 
 
三上)最後に何か高校生に向けて一言いただけましたらうれしいです!
 
堀山)自分の「やりたい」に素直になってほしいなっていうのが1番です。自分のやりたいこととかって、社会に出たらこうできないんじゃないかとか 色々考えちゃう人もいると思うんですけど、最終的に自分のやりたいことっていうのが1番力を発揮できる場所だと思うし、1番自分らしく人生を歩める秘訣だと思うので、まずはやりたいことが何かとか、やりたいことを軸にしていろんなこと考えてほしいなって思います。応援しています!

以上


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