360日のアリア|さそり座の月齢2
月齢2
月齢2は、出勤中に、紳士な姿で月から降りてきた。
地上のエネルギーから身を守る月の加護を自らにかけ
すとん、と音がするように私の目の前に降りた。
スラリとして背が高く、きっちりとダークスーツを着こなしている。
目の前を歩く。
歩調はゆったりしているのに
一定の距離を縮めることはできない。
神様の歩み。
プロジェクターでどこかから映してるのかなと
毎度思う、神霊との距離。
フレンドリーにたわいない話をし
コンビニで買い物をした後、お金の話になった。
月齢2「稼げるようになるまでネットワークビジネスや弱者ビジネスをしてもいいんだよ?」
小夜「はあ?ははぁ🤔 月によって狂わされる、その手口はあなたが担ってるのか。貧困を生み出している元をただすのが本筋でしょ。私と考え方は合わないよ」
切り返すと、月齢2に二面性があるのを示すように、その姿からゆらゆらとマフィア風の影が見えてきた。
富裕層でありながら犯罪をしている人のようだった。
「取引をしよう」ともちかけてくる
「君が手に入れられるのはお金、しかも大金だよ。とてつもない資産になる。僕は君の後押しをする。そのかわり、僕は君の良心をもらいたい」
「良心は地球にとって非常にやさしい。僕は良心を奪って地球をズタズタにしたいんだ」
午前中仕事がどんよりしていた
行き違いや途中頓挫
適当な割り振り
中途半端な姿勢
月齢2はにやりと笑っている
交渉のテーブルにつかない私への嫌がらせ。
人の仕事を荒すのはやめろくず、と思いながら
おもむろに詩を紡いだ
たかいてを
むかえるしぶきに
たましいが
だんだんいとを
つむぎだすなら
詩を読むと「怖い」と言って隠れた
この詩の全部が怖いらしかった。
毛布に包まる様子が見え
さらに追い打ちをかける
ひかじんの
たましいしんしな
きみのよに
ひかりはなれる
いきひのしんせい
2度目の詩詠み。
月齢2は「もうおわり」だ、といって溶けてしまった。
その後、
月の向こうからもう一人でてきて、溶けた月齢2を抱き上げた。そして一礼し、月の向こうに消えていった。
月齢2よりさらに背の高い、目がきりりとした姿。月の扉を閉める際に振り向いて、睨むとも睨まないとも言える目つきでこちらをみつめる。
" あとでまた "
音のない声、唇の動きがそう言っていた