地球が風邪をひいた日
今から、とてつもなくくだらないことを書く。
『心が風邪をひいた日』という音楽アルバムがある。
まだ、今でいうシティ・ポップのサウンドが完成する前の時代に作られた。今でも有名な「木綿のハンカチーフ」は、このアルバムに収録される曲のひとつとして書かれた。
少し変わったタイトルは、作詞家の松本隆さんがこのアルバムに書いた、別の詞の一節から取られている。青春期が終わり、社会人として第一歩を踏み出す時期を季節の変わり目になぞらえて、失恋の痛みを「心が風邪がひいた」と形容している。
ここ数年の気が狂うような暑さは「温暖化」と言われているが、その言葉はもはや生ぬるくなっている。沸騰化というのも、正直ピンと来ない。
つらつら考えていて、不意に思い当たった。
地球が風邪をひきはじめているのではないだろうか。
熱を出し(海面水温上昇・氷河融解・太平洋高気圧など)、水が出て(台風・線状降水帯など)、身体がふるえて(上空の寒気による雷雨・雹・竜巻など)いる。人々や動植物は倦怠感で参っている。
「日」という表現はそのまま投影できないが、「地球が風邪をひいている時代」に入ったとみてほぼ間違いないだろう。
人間の風邪には、よい解熱剤がたくさんある。昔ながらの漢方がよく効く。
十分に睡眠を取れば、数日で快方に向かう。
しかし地球の風邪に、解熱剤は存在しない。
「十分な睡眠」を取ることもできない。
私たちが生きている間は、もう治らないのだろうか?