見出し画像

正義の女神と五条悟と無意識バイアス

今の勤務先は
経営陣から一般社員、契約社員までもれなく
各人の担当業務に合わせて
IT分野のテクニカルなものから
業務に関わる法律系、心理学系まで
多岐にわたる講座学習と
アセスメントとを課している。

講座終了後の試験が通らない人は
合格点に達するまで
講座の再履修がついてまわる。
講座はイントラネット上で完結するので
人事担当は各社員の
講座の進捗を全て把握している。

と、文字にすると
ディストピア臭い組織にもみえてくるが、
講座内容自体は難しくないので、
業務上の共通言語のアップデートを
お忘れなく、程度のものだ。

今日、私が修了した講座は、
『無意識のバイアス』というものだった。
ちなみにこの講座は
全社員履修義務科目となっている。

現在の勤務先も含め
私が今まで勤務した
UKに本社がある会社はみな
入社の契約書に
国籍、性別、家族構成のほか
民族がどこの出身かミックスか
というのを記載するかわりに、
企業側からも、
社員を国籍、民族、性別、年齢などで
差別しません、
という条項を明記していた。
スイスの会社に入社した時は
そういった項目が契約書になかったので
移民と多文化というお国の事情が
反映されているのだろうと思った。

UKでは50年以上前から
差別禁止法制の整備がなされ
2010年にEquality Act(平等法)が施行された。

しかしながら
法の条文と実際とは
常に一致するとは限らない。
民族、文化の違いからトラブルが発生し
辞めていった同僚のケースを
何度か目の当たりにした。
当局に訴えれば法律違反でも
当人にとっては
センシティヴな点でもあり
根は深いと思われる。
『無意識のバイアス』講座の全社員必修は
そんな背景を持つ国の会社だからこそ
実施されているのかもしれない。

講座はこんな感じで始まった。

『次に挙げる職業と
想起されるジェンダーを
答えてください。

看護師
CEO
教師
エステティシャン
CFO
配管工…』

この問いは
各個人の蓄積された経験による
回答を求めているので
何が正しい正しくない
ということはない。

イェール大学の研究によると
各個人の毎日の経験と判断から
無意識に蓄積されたバイアスは
人類の95%以上の意思決定に
なんらかの影響を与えているという。

人間は誰でも1秒間に
膨大な情報量に接していて
身の回りに起こるのは1100万ビット
五感で読み取れるのはそのうち200万
その中から取捨選択して
最終的に取得できるのは
わずか126とも134とも言われる。
ともかく
人間が認識できる情報は
全体のごく僅かなポーション
ということになる。

ならば、
学習という名のもと
効率と怠惰の紙一重を司る
人間の脳が
無意識のうちに
蓄積された経験や学習を
判断材料として使いたくなるのも
無理はないかもしれない。

その一方で
無意識バイアスに偏重すると
人間関係やパフォーマンスへの悪影響、
視野が狭まり好機を逃し、
組織では離脱者の増加リスクに
つながると言われている。

講座の締めくくりは
無意識バイアスの弊害を
被らないためには
そのバイアスを自覚することが有効
とのことだった。

そのバイアスは
発生要因はいろいろあるにしても
最終的に主観的になり過ぎるという
共通の着地点がある。

各自が主観的になり過ぎないためには
正義の女神のように
目隠しして神の法秩序に
審判を委ねる
くらいの覚悟みたいなものも
必要なのだろう。
とはいえ
日常生活での人間の交流は不可欠だし
自分としての判断を
全て放棄するなんてことは
責任転嫁みたいな感じもするしで
生身の人間として生きている以上
一番大切なのは
自分と自分以外との
バランスの取り方なのだと私は思う。

それにしても
正義の女神の目隠し具合が
私には五条悟と被って見えてしまう。
やはり五条悟も
目隠しして神の法秩序に委ねることで
最強の無下限呪術を
駆使できるのかもしれない、
というのは私の無意識バイアス。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?