あの頃のふたり
〝花束みたいな恋をした〟
映画の途中で『ぽろぽろ』という効果音が付きそうな泣き方をしてしまったのは
きっとあの頃のふたりの記憶が蘇ったからで。
壮絶で、暖かくて、哀しくて、それでいて愛おしい5年間だった。
1番最初に[壮絶]という単語が出てくるくらいに
わたしたちは他人から見たら醜い5年間を過ごしていたと思う。
けど、あの頃はそれが大切で幸せで苦しかったなあ、と久しぶりに思い出した。
19歳の頃に出会って、そこから5年間付き合ったり別れたりを繰り返しながら
なんとなく一緒に居て、このまま一生一緒にいるのかもしれないと思い、
ふとした瞬間に一生一緒にはいられないな、でも離れられないな、と思う。
わたしたちは好きな音楽も、趣味も、休みの日の過ごし方も全然違った。
違うことが楽しかったし、新鮮だった。
わたしは、わたしの好きなバンドを彼にたくさん聴かせたし
彼は好きな漫画をわたしにたくさん読ませてくれた。
彼はバンドを聴くようになったし、わたしは少年漫画が好きになった。
出会ったときは手探りでお互いの好きなものを好きになろうと歩み寄って
2年も経てば自然とお互いが好きそうなものを自分も選んでいて。
彼から言われて嬉しかった言葉は、好きだよ、でも、かわいいね、でもなく
「これ好きでしょ?」「好きそうだな、と思って」だった。
出会って4年、何度目か分からないくらいの喧嘩をして距離を置いて
久しぶりに会って、また頻繁に会い始めたある日。
彼の帰宅前に、彼と会ってなかった間に出会った新しく好きになったバンドの曲
ズーカラデル:夢の恋人 を流していた。
途中で帰宅した彼が興奮気味に、自分のプレイリストを見せてきて
「俺も!最近このバンド知って聴いてる!」と。
彼が昔教えてくれた好きな音楽のタイプとはだいぶかけ離れていて、
わたしが好きな音楽のドストライクで。
この人とふたりでいろんなものを積み重ねてきたんだな、と
その瞬間にうるっときたのをずっと忘れられないと思う。
映画の中できぬちゃんが言った
「女の子に花の名前を教わると、
男の子はその花を見るたびに一生その子のこと思い出しちゃうんだって」
わたしもどこかで聴いたことある言葉で。
わたしはこれが好きな音楽にも当てはめられると思う。
いまだに尾崎豊を聴くと、尾崎豊について教えてくれた幼馴染みを思い出すし
back numberを聴くと、2ヶ月だけ付き合った元彼を思い出すし
スピナビルのライオンの子を聴くと、
小さい頃パパとドライブしながら聴いたことを思い出す。
ああ、きっともうわたしは恋しないだろうなって思って生きているんだけど
こういう些細な瞬間に誰かに思い出してもらえる存在であれたら
それは目には見えないし、言われなきゃ分からないけど幸せなんだろうな。
この映画を見て、過去の自分と向き合うことができて
5年という年月を一緒に過ごしてくれたあの人を久しぶりに思い出して
もう少し前のわたしならもしかしたら「この映画よかったよ」と
連絡をしてしまっていたかもしれないけど。
いまのわたしは、もう、しないです。
きぬちゃんとむぎくんのおかげで、更に前に進めそうな自分に
いまはすごくワクワクしてる。
最後に、わたしも「電車に乗る」ことを「電車に揺られる」と表現するような
言葉には表せないんだけど、そんなひとが好きです。