
サドベリー教育の『毎日ミーティング』で家族が変わった
「今日の議題なにかある?」
わが家では20時になるとアラームが鳴り、テレビ画面を閉じてミーティングの準備をする。
サドベリースクールに通っている7歳の長男は、毎日スクールでミーティングをしてることから、息子の希望で家でも同様に行うようになった。
議題は、家族や家庭に関するあらゆること。たとえば、『(兄弟喧嘩が多すぎるので)どうしたら喧嘩を減らせるか』や、『人が作ったもの(レゴ)を壊すことについて』など、テーマは様々だ。
ゲームをやめられなかったり、弟に強く反撃してしまったりして、いつも親から注意を受けていた長男だが、そんなことも自ら議題として挙げるようになった。私たち親は最初、「自分で自分を追い詰めていない?これを決めたあとで怒らない?」と不安を感じていたが、彼は自分や周りが注意を受けていることが家族全体の問題だと認識し、それをどう改善できるかを話し合うようになった。
これは親や先生、社会全体にも当てはまることだが、これまでは世の中のルールを決める権限は常に大人にあった。なぜなら、子どもは経験や視野が狭く、大人の方がそれを補えるだけの知識や経験を持っていると考えられてきたからである。私たち親も、家庭という枠組みの中で、子どもに指示することに疑問を持つことはなかった。
しかし、サドベリースクールに通うようになり、学校のルールや運営を生徒たち自身が決める姿を見て、今までの常識に疑問を抱くようになる。サドベリースクールでは、人を傷つけないことや掃除など、自分たちが安心して過ごすために、ルールを自分たちで決めている。彼らの空間を初めて体験したとき、私はまるで実家のおばあちゃん家にいるような自由さと寛容さを感じたのだ。
もちろん、子どもならではのわがままやトラブルも発生するが、それは一方的に怒られるのではなく、指摘され、改善されない場合はミーティングで何度も話し合われる。そこでは、大人のスタッフも参加し、一方的な叱責にならないよう工夫もされているようだ。毎日のミーティングでは、やりたいイベントや困りごと、問題点を話し合い、時間内に決まらなければ何度も繰り返し議論する。少人数であるからこそ成り立つ部分でもあるが、異年齢の子どもたちが意見を出し合う姿を見ると、ハッとさせられた。
私たち親や教師は、子どもの意見や状況をみているつもりで、自分たちのルールや要求を押し付けていなかっただろうか?少なくとも、これまで子ども自身がルールを決める機会は与えていなかった。しかし、毎日ミーティングを開催することで、前回の内容を確認したり、新しいひらめきが生まれたりしながら、家族全員で問題点を共有し、改善策を話し合うことができるようになったのだ。
わが家では、問題点が確認できたら「今日のミーティングで話し合おう!」と言って、家族全員が落ち着いた状態で話し合いが始まる。これにより、指摘する側もされる側も、一度気持ちを落ち着けてから冷静に物事を確認できるようになった。私は、ミーティングを通して息子の考えや成長を感じ、7歳の子どもでもここまで思慮深く考えられるのかと驚きと喜びを日々感じている。
またサドベリースクールに通ってから、息子の成長もさることながら、私自身にも大きな変化が訪れている。決まりごとを作る際、同じ賛成意見でも様々な立場と面持ちがあること、反対には『いやだ』だけでない考えがあること。意見を言い合うことで分かり合えることがある、それは立場で強要することではない、そんな当たり前のようで実践には程遠かった事柄がたくさんあったように感じた。
息子の成長スピードになんとか振り落とされないよう、私も学び、成長していきたい。
※毎日ミーティングで一番ほっこりした会は『お家に名前をつけよう』の時。自宅の外壁が雲みたいに白いので『もくもくさん』に命名。
わが家のメンバーにもくもくさんが参戦した!
長男いわく、「もくもくさんはしゃべらないけど見守っている」とのこと。