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大吐露「代償」

二十歳になっての初めての夏。よくある小説に出てきそうなうだる様に暑い日。僕は車の免許を取る為に教習所にいた。
高校を卒業したばかりと見られる若い男女を見て思う。うるせぇな。しょんべん臭いガキ共が。ただでさえ暑いのにさらに体温が上がる。
ペットボトルのお茶を一気飲みする。空になったペットボトルに苛立ちさらに体温が上がる。
「次は教室に移動してください。」
係の人の案内に従う。移動の合間にさらにお茶を買って喉を潤す。暑い、暑すぎる。
教室に入ると冷房が効いていて体温が一気に下がった。
ハゲ上がった教習員が教室の前で喋り出す。
その時気づく。やばいトイレに行きたい。気のせいだと思うも2分後には確信に変わる。
これはやばい。どうする?トイレに席を立つか?ダメだ!そんな事とてもじゃないけどできない!後何分だ?45分。もつか?ギリいけるか?もたせるしかない。
覚悟を決め、腹を括る。括った腹とは裏腹に膀胱は膨れ上がる。残り15分。その時は来る。
僕は今までの選択の代償を支払う。
大か小で言えば小なのにその代償は大。
息を止め、叫ぶ様に漏らす。
解き放たれた膀胱は外へ外へと尿を押し出す。自分の意思とは関係のない排尿がこんなにも快楽を伴うとは知らなかった。圧倒的開放感を味わいながらズボンを濡らし床に大きな水溜りを作る。最後の悪あがきに飲みかけのお茶をこぼし、さもこれはお茶をこぼしたからですよと言う顔をする。
この瞬間人類で一番ダサい人間が確定する。
チャイムがなり、さっきまでしょんべん臭いガキどもと見下していた男女から逃げる様に外へ出る。本当にしょんべん臭かったのがどちらかは明白だ。
これが教習所初日の出来事。そう僕はこれからここに通うのだ。
外に出ると雨が降っていた。そんな天気とは裏腹に漏らした膀胱はこれでもかと言うくらい晴れやかだった。

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