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私のスモールビジネス「メツゲライ・イノウエ」のビジネスモデルについて

あれやこれやと言っていますが、今回は私自身のスモールビジネスについてご紹介したいと思います。

匂わせ画像からすでに認識されている方もおられるかも知れませんが、「メツゲライ・イノウエ」という本格ドイツ製法ハムソーセージ専門店を営んでいます。今月の16日で開業から丸11年経過し、12年目を迎える店舗です。

ハムソーセージ専門店というと、フランス系のシャルキュトリーかドイツ系のメツゲライかに2分されますが、私はドイツ製法に特化しています。ただし、恐らく今も日本初で唯一だと思いますが、私や私の会社では一切製造をしていません。

加工肉というものはドイツで世界的な権威を持つコンクールが幾つも行われるのですが、金賞ともなると評価項目が200ほどあり、複数名の審査員による評価が全ての項目で満点を取らなくては行けない、という非常に難易度が高い中、金賞を受賞する日本人の職人さんを探し出し、その中でも特に私が美味しいと感じ日本人の舌に合い、さらには職人さんの人柄が良く「この人のために売上を上げ続けたい」と思う職人さんの商品だけを集め、統一ブランドにする、という特殊な方法を採用しています。

経営学用語で言うところの「ファブレス経営」といって、工場や生産拠点を持たないスタイルでの経営をしています。
簡単に例えるとアップル社が同じファブレス経営です。アップル社も自社には生産拠点を持たず、世界中にパーツや技術ごとにアウトソース先を持って製品化し展開しています。

採用している戦略としては、マイケル・ポーターの基本戦略でいうところの「差別化戦略」と「集中戦略」を合わせた「差別化集中戦略」になります。

「集中戦略」については、そもそもこだわり系のハムソーセージ専門店は国内に100ほどは存在しているかと思いますが、そのジャンルを選択した時点で競合他社の少ないニッチな市場に特化して自社のビジネス戦略を展開していくことになるので、競合他社との価格競争に巻き込まれる可能性も低く、経営資源の投入を必要最小限に抑えることも可能となっています。

また「差別化戦略」自体は、自社商品やサービスが顧客にとって、いわゆる「オンリーワン」となる状態を目指したもので、競合他社との価格競争から脱却できるというメリットがありますが、何がオンリーワンかというと、私や私の会社では作っておらず、またどこかの代理店でもないということになります。

私は自分のサラリーマンのキャリアの中で、製造者であるメーカーと販売者である商社の両方を経験しています。確実に競争優位性が高いのはメーカーだと考えています。価格決定権があるからです。
ただし自分のスモールビジネスを考えた際、元々副業からスタートさせたかった(いきなり独立なんて怖くてできなかった)ので、世界トップクラスの製造技術を習得することは何年もかかる上、製造機械類は基本ドイツ製のため、一式揃えるのに1,000万円はかかるし、そもそも製造拠点を構えなくてはいけないので無理だと考えました。

総合酒類メーカーの営業職をやっていたことから、飲食店に関する知識の方が圧倒的にあったわけですが、競合も非常に多い上に閉店リスクも非常に高く、また調理技術を持っていなかったのでそもそもスモールビジネスの選択肢から外していました。

「とにかくコンパクトで撤退容易で機動性の高い経営」これを目指しました。本格ドイツ製法の加工肉とその職人さんと出会ったことで「私はこれだ!」と確信を得て始めましたが、そもそも加工肉の業界になんて勤めたこともありませんので、何の知識もありませんでした。

初めて会った本格ドイツ製法の加工肉と職人さんですが、世界コンクールで銀賞を取っていて私も「こんな美味しい商品を食べたことがない!」と感動・驚嘆したものの、やはり家内制手工業かそれに近いサイズ感で経営されているので、製造に対しての技術力や制度は驚くべきなのですが、販売方法やマーケティング・ブランディングに関しては失礼ながらまだまだ伸び代があると感じたのです。

私自身は営業畑ですが中途半端に製造技術を持って「これ美味しいでしょ!?」と営業力だけで展開する気にもなれませんでしたし、マーケティングやブランディングの力が経営に大きく左右すると考えていましたし、サラリーマンをしながら物理的に製造技術を習得することも無理な話で、どうすれば可能性が高まるかを考えてばかりいました。

結局私が作り上げたシステムはこうです。
バリューチェーンという機能別に分解するとわかりやすいのですが、こだわり系の職人さんが自社でやっている

原材料調達→製造→販売

を細分化し、私は私が得意とする部分だけに注力すれば良いのではないか?と気づいたのです。つまりこうです。

<原材料調達><製造> は職人さんの得意な仕事なのでそれを任せる。

<販売>は自分の得意な仕事なので自分の仕事とする。

加えるならば、販売の前に行うマーケティング、ブランディング、具体的にはデザインやオンラインストア制作などの戦略立案、高いレベルでの接客、アフターサポートなどに細分化(本当はもっと細かいです)し、職人さんにはできない、もしくは限界がある機能に注力して、製造できなくても勝てる可能性のあることだけを徹底して行うというものです。
経営学的な表現を使うならば、顧客サービスをプレ・オン・ポストに分解してマネジメント・デザインするといった方法です。

しかも、職人さんは自分の作る商品しか詳しくありません。基本的に他の職人さんの商品や技術に触れることがないので知らないのです。しかしながら私はドイツも含め日本中の職人さんを見て味わうことで、職人さんの知り得ない「製造面以外での圧倒的な専門知識」を得ることでそれを武器としました。

私の味の目利き力は確かなのか?

と思われるかも知れません。確かに「美味しい」は主観です。が、元々私は様々な種類のお酒を(飲食店に)売ってもらうために、そもそも美味しいものを知っておく必要があり、また、だからこそ当時の私の年齢では食べることもできないような美味しい店を仕事の中で回りまくり、月間だけで何十店舗も飲食し、そんな仕事を何年もやってきたわけです。つまり舌が肥えているのです。

単に「受賞しただけ」「マイスター資格を持っている」では私は反応しません。本当に美味しい、これを超えるものは無いと思うような商品だけを集めていますから、猛烈にお客様がファン化します。その結果が12年目を迎えられることができるという証拠です。

ぶわーっと書いてしまいましたが、ざっくりとこういうスモールビジネスを行っています。

ということで、また今度。


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