【美術館】STARS展
STARS展に行った。世界的に活躍している日本の現役の美術家6人の作品を展示した企画展であるが、最後の館長挨拶であった通りその6人のすべてが人生のどこかのタイミングで海外での生活を経験しているのは驚いた。
興味深かったのは奈良美智さんの作品であった。あの不満そうな怒りを抱えていそうな少女を描いた作品が有名であるが、あの作品は社会に不満を抱えていながらもそれを訴えることができない立場の人間を描いた作品であると初めて知った。その象徴としておそらく少女が描かれたのだろうが、彼女は男性と比べて差別的な扱いを受けることもあっただろうし、そうした憤りを抱えていても投票によって自らの意見を示すことができない立場にある。絵画で描かれている内容とそれが意味する抽象的な概念が一貫しているなと思い、さらに良さを味わえた気がする。
一方で、今回描かれた内容ではなぜかうっとりしているような作品も見られた。かつて不満そうな少女が描かれた頃と比べて今の社会では彼女の不満が減ったように思われないので、あの不満はどこに行ったのだろうかと思った。不満が消えたのであればそれは喜ばしいことであるが、不満を蓄積しすぎて達観せざるを得ない立場になったとするならば、それはポジティブなことではないなと思った。果たしてどういう意味なのだろうか…。
また企画展の外での作品も1つ興味深いものがあった。それは使い古された衣服たちが合わさって波のような形を構成していて、その波が教会を飲み込んでいるというものである。先進国で使い古された衣服がまだそれを必要としている国々へとリサイクルされることは一見良いことであるが、安価な服が先進国から流れてくることで現地産の服が割高に見えて売れなくなってしまうという問題は知らなかった。こうした抽象的な問題を絵画という形で表現するということこそが、現代アートの醍醐味だと個人的に思った。