O.ヘンリーのお話。
《短編小説の名手》
ある年代以上の方々にはスゴく響くと思うんですけど、昔ってやたらと「O.ヘンリーの本を読みなさい」って大人が、周りに多く居ませんでしたw?教科書にも載ってたかな…?
彼は《短編小説の名手》でしたし、子供にも理解出来る上に教え諭す様な話が多く、それで且つ粋と云うかアッと言わせる落ちにを得意とするのも、魅力では有ったんでしょうけど…。
最近はめっきりその名前を聞くことは少なくなりました。でも『賢者の贈り物』『最後の一葉』なんて、やっぱり頭にしっかり残ってますもんね…。
《名前の不思議》
そしてもう一つ、小さい頃からずっと気に成ってたのは彼の名前。『O.ヘンリー』って、何で皆《ファーストネームを省略する》の?と長らく思ってました。
例えば、暗殺されたケネディ大統領の様に、尊敬と愛情を込めて「JFK」と表記するのは分かるんですけど、日本人の(それも大人達)が一様に「O.ヘンリー」って呼んでいるのは《そんなに気安く外国人の名前を略して呼ぶの?》っておかしく感じていましたw。
ある時、ふとそれを思い出して○ikipediaで検索してみたらビックリ!彼の本名では無くて、彼自身が付けた《ペンネーム》だったんです。それも『O.は本当に、O.だけ』で、“初めからファーストネームを設定していなかった”んだそうです。
およそ作家を目指す人で、ペンネームの名前を“略称にしちゃう”人って、洋の東西を問わずあまり居ないと思うんですけど、ちょっと変わった感覚の持ち主だったのかも知れません。本人自身、「別に名前はどうでも良いから…」みたいな事を話していたらしいですが、実際には諸説あるそうです。
調べてみて、コレも意外だったのは、彼って19世紀末から20世紀初頭に活動していたこと。そんなに古い時代の小説なのかぁ…、と(馬鹿にしている訳では有りませんが)話の切れ味の鋭さは、現代でも充分通用するなぁと改めて感心しました。ただ、彼自身の人生は中々順風満帆とは言えない厳しいものだったようです。
まぁそういう多くの苦い人生経験を経てるから、あぁした人の心にいつまでも残る作品が書けたのかもしれませんね。
《好きな作品》
最後に、自分の好きな話を紹介して終わりたいと思います。先程挙げた『賢者の贈り物』等は本当に有名ですが、個人的にはちょっと真面目過ぎというか《良い話》過ぎて、もっと「エッ?!」と云う感じで終わる話の方が好きです。
タイトルは『警官と賛美歌』です。「このまま良い方向へ進むのかなぁ〜」と思わせておいて「アッ!!」と言わせるラストの落とし方が本当に上手くて、未だに忘れられない作品です。勿論、既に御存知の方も多いでしょうし、未読の方には《ネタバレ》したくないので、気に成った方は、是非御一読ください。
そして、ただ驚かすだけでなく、《憂き世の可笑しさとほろ苦さ》を内包している彼らしい作品の一つだとも思います。
この話を読むと、いつも映画『ショーシャンクの空に』に出てくる年老いた受刑者のエピソードを思い出します。自分が年齢を重ねてきたので、尚の事身に沁みてしまいます。世間では《拝金主義》に毒され、「金さえ貰えるなら何でもやる」事が当たり前のような犯罪も増え、“人として大切なモノとは何か”が社会全体から関心が失われつつある現代に、彼の著作を読むことで、《人として失ってはいけない何か》を色々と考えさせられることに成るでしょう。そんなに簡単に答えが出る事ではないけれど、フッと心が温かくなる、優しく肩を押す様な素晴らしい作品ばかりだと思います。
世間はようやく《秋らしい気候》に成ってきましたね。改めて、お時間のある方はスマホを少し手放して、御一読をお薦めします。