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『分析者のための行動経済学入門』の話②:書籍案内編
前回のnoteでは、『分析者のための行動経済学入門 プロスペクト理論からナッジまで、人間行動を深く網羅的に解明する』(ソシム)の内容を主に紹介しましたが、今回は書籍案内を主にしていきたいと思います!
※ 日本語で読める本に絞って紹介します。また、「書籍案内①:行動経済学を掴むために」は、前回のnoteを参照してください。
書籍案内②:より深く行動経済学を学ぶために
本書を読んでみて、もう少し行動経済学を学んでいきたいと思われた方は、以下の順番で読み進められると良いかと思います。
どちらの教科書も、本当におすすめです。
ただ、これらの教科書を理解したり、本書以上のレベルの行動経済学を身につけていくためには、経済学、特にミクロ経済学を理解することが必要です。
経済学になじみがない人は、以下の教科書を順に読み進めるといいでしょう。
学部初級レベル:ダロン・アセモグル、デヴィッド・レイブソン、 ジョン・リスト(2020)『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』東洋経済新報社
学部中級レベル:スティーヴン・レヴィット、オースタン・グールズビー 、チャド・サイヴァーソン(2017-2018)『レヴィット ミクロ経済学[基礎編][発展編]』東洋経済新報社
学部上級~大学院レベル:神取道宏(2014)『ミクロ経済学の力』日本評論社
書籍案内③:各トピックを深く知るために
ここからは、各章のトピックごとに関連書籍を紹介していきたいともいます!
因果推論(第2章)
第2章では、因果推論の基礎を紹介しました。本書よりも詳しい入門書として、以下の2つがおすすめです。
これらの2冊で因果推論の考え方をより深く掴むことができるようになります。より理論的な内容やRでの実装については、
安井翔太(2020)『効果検証入門』技術評論社
星野匡郎、田中久稔、北川梨津(2023)『Rによる実証分析 (第2版): 回帰分析から因果分析へ』オーム社
が参考になります。そして、本格的な教科書になりますが、以下もおすすめです。
本当はもっとお勧めしたい書籍があるのですが、それはこちらのサイトにまとめていますので、併せて参考にしてください。
はい、多すぎですよね。ということで、実践寄りの書籍を選抜したものはこちらになります。
うちのゼミ生の大学院進学者向けに、もう少し絞った因果推論のための計量経済学(実践寄り)を作ってみました!
— 黒川博文 Hirofumi Kurokawa (@kurodotty) October 7, 2024
入れたかった本もたくさんありましたが、入れれず…https://t.co/F4bBw9Vb6i https://t.co/ay4mvbFyur pic.twitter.com/VVWCpRdgRt
ここまでは「計量経済学」をベースとした因果推論に関する書籍を紹介しました。因果推論は、分野ごとに大事にしている考え方が微妙に異なったりしています。疫学・医学統計学では佐藤俊太郎先生にまとめていただいたものがありますので、こちらも参考にしてください。
因果推論のための疫学・医学統計学(実践寄り)を作ってみました!
— Sato Shuntaro|佐藤俊太朗 (@Shuntarooo3) October 7, 2024
独断と偏見に基づいています.こう見ると学部4年から修士2年ぐらいまでが渋滞を起こしてますね.
もっとタイプを増やしてもおもしろいと思いました.やってみます. https://t.co/V7dCJ90ZxG pic.twitter.com/Gtw53KrEvB
経済モデル(第3章)
経済モデルについては、先ほど紹介した『ALLミクロ経済学』『レヴィットミクロ経済学[基礎編][発展編]』『ミクロ経済学の力』といったミクロ経済学の教科書が参考になります。
プロスペクト理論(第4章)
効用の概念からリスク選好、期待効用理論、プロスペクト理論について解説した第4章ですが、本書よりも丁寧に効用関数をもとにした議論を以下の書籍では解説されています。
川越敏司(2020)『「意思決定」の科学なぜそれを選ぶのか』講談社ブルーバックス
また、
川越敏司(2024)『行動経済学の真実』集英社新書
では、プロスペクト理論に関連する「参照点依存」「損失回避」「保有効果」「フレーミング効果」について、最新の研究や再現性の観点も踏まえて詳細に議論しています。
現在バイアス(第5章)
第5章では、「今すぐするか、後でするか」「近い将来にするか、遠い将来にするか」といった異時点間の選択の際、「現在バイアス」によって、先延ばしなどが生じることを説明しました。入手しずらいかもしれませんが、
池田新介(2012)『自滅する選択:先延ばしで後悔しないための新しい経済学』東洋経済新報社
は、日本での研究成果も多く含んで、詳しく解説されています。そして、
イアン・エアーズ(2012)『ヤル気の科学:行動経済学が教える成功の秘訣』文藝春秋
ケイティ・ミルクマン(2022)『自分を変える方法──いやでも体が動いてしまうとてつもなく強力な行動科学』ダイヤモンド社
は、習慣形成などへの行動経済学の応用という文脈でも非常に参考になります。
社会的選好(第6章)
利他性などの他人を気にした行動を分析してきた第6章ですが、
小林佳世子(2021)『最後通牒ゲームの謎 ◇進化心理学からみた行動ゲーム理論入門』日本評論社
は、本章で取り上げた「最後通牒ゲーム」をテーマに1冊の本で詳しく紹介されています。
また、社会的選好とインセンティブの関係を取り上げましたが、関連して以下の書籍は様々な応用の観点からも参考になります。
ウリ・ニーズィー、ジョン・A・リスト(2014)『その問題、経済学で解決できます。』東洋経済新報社
限定合理性(第7章)
ヒューリスティックスやバイアスについては、ノーベル経済学賞受賞したダニエル・カーネマンの大著が詳しくて参考になります。
※再現性について問題がある社会的プライミングに関する内容も取り上げられてはいますが、基本的に再現性が高い内容が多く含まれています。
メンタルアカウンティングに関しては、ノーベル経済学賞受賞したリチャード・セイラーの自伝的行動経済学の解説書が参考になります。
ナッジ(第8章)
ナッジについては、言うまでもなく、セイラー・サンスティーン(2022)がおすすめです。
応用(第9章)
行動経済学を応用していく際の注意点としては、ホワイトハウスからUber、Lyft、Walmartまで民官両方で実務経験のあるシカゴ大学教授ジョン・リストの「スケーリング」の議論が参考になります。
ジョン・リスト(2023)『そのビジネス、経済学でスケールできます。』東洋経済新報社
また、
依田高典(2023)『データサイエンスの経済学 調査・実験,因果推論・機械学習が拓く行動経済学』岩波書店
では、限界介入効果や因果フォレストといった最先端の分析手法で「異質性」に迫る方法が理論的にも詳しく説明されていて、分析において有益です。
まだまだ紹介したい本はたくさんあるのですが、、その他はこちらのサイトを参考にしてください!
ということで、『分析者のための行動経済学入門』のご紹介でした(あ、このnoteでは本書自体を紹介できていませんね~)