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『戦国ごはん男子・伊達政宗』第七章

第七章「せりの香り立つ鍋と士気の結束」


伊達政宗の軍勢は敵軍とのにらみ合いが続き、長い陣中生活を余儀なくされていた。士気が下がるのを感じた政宗は、状況を打破するために何か策を講じる必要があると考えた。

政宗:「動かない時間が長すぎると、兵も気が緩む。腹が満たされりゃ、気も引き締まるだろう。」

小十郎:「食事で士気を保つという発想、さすが殿。早速、食材を調達させましょう。」

すぐに各地の農村から新鮮な野菜や鶏肉が届けられた。その中に村人が持ち込んだ一束の「せり」があった。


せりを手にした政宗は、その鮮やかな緑と独特の香りに目を見張った。

政宗:「この草、いい香りがするな。野趣あふれる香りだが、これを料理に使ったことはないな。」

小十郎:「これは『せり』と呼ばれるものでございます。根から葉まで食べられるのが特徴だとか。」

政宗:「おもしろい。ならばこれを鍋に加えてみるか。」


せり鍋の作り方

材料

せり(根、茎、葉を分けて使用)

鶏肉(骨付き肉が好ましい)

焼き豆腐

大根と人参(薄切り)

だし汁(昆布と干し椎茸を煮出したもの)

調味料(薄口醤油、酒、みりん、塩少々)

作り方

1.だしの準備

水に昆布と干し椎茸を浸して煮出し、深い旨味を引き出す。

2.鶏肉を煮込む

鶏肉をだしで煮込み、アクを取りながら旨味を引き出す。

3.具材を加える

大根、人参、焼き豆腐を順番に投入し、柔らかくなるまで煮込む。

4.せりの投入

鍋の最後にせりを加える。根はじっくりと、茎と葉はさっと火を通して仕上げる。


出来上がった鍋は、せりの芳香が立ち込め、食欲をそそる香りに包まれた。兵士たちは半信半疑で椀を手に取り、一口すすると驚きの表情を見せた。

兵士A:「なんだこの香りは!これまでの鍋とはまるで違う!」

兵士B:「根っこがシャキシャキしてて、野菜とは思えない食感だな。」


政宗もその香りと味わいに満足し、笑みを浮かべた。

政宗:「この鍋、ただ腹を満たすだけじゃないな。心まで温まる。」

小十郎:「兵たちが再び笑顔になっております。鍋一つでここまで変わるとは。」

兵士たちは鍋を囲む中で自然と笑顔が増し、会話も弾んでいった。停滞した状況の中でも結束を取り戻し、次の戦いへの気力を養った。


夜、兵士たちが寝静まった頃、政宗と小十郎は焚き火を囲みながら話していた。

小十郎:「殿、先ほどの鍋のおかげで兵士たちの士気が上がりました。やはり、殿の柔軟な発想には感服いたします。」

政宗:「そりゃどうも。でもな、小十郎。お前ももう少し柔らかい考え方を持てよ。何事も硬すぎると折れるぜ?」

小十郎:「心得ます。しかし、私は堅さこそが武士の誇りと信じております。」

政宗:「またそれかよ。ま、そういうお前が俺の右腕なんだから、釣り合いが取れてんのかもな。」

二人は焚き火を見つめながら静かに笑った。


翌朝、せり鍋の効果で体力を回復した兵士たちは、活気を取り戻して出発した。この鍋は後に「せり鍋」として仙台の冬を代表する料理となり、厳冬の中で絆を深めたエピソードとともに語り継がれることとなる。
                つづく……

※この物語は、作者の想像(創造)の話しである。

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