日記2024.3.9 劇団四季『アナと雪の女王』
義弟が職場割でチケットを取ったとのことで誘ってもらい、劇団四季の『アナと雪の女王』を観劇してきた。
10年ほど前に『ライオンキング』を観劇したときにも驚いたのだが、舞台美術が素晴らしい。とくにエルサの氷の魔法の表現は圧巻。なかでもプロジェクションマッピングと衣装を駆使してアナが氷漬けになるシーン。あれは本当に完全に凍っていたよ。
また、前半の締めとなる「Let it go」を歌いながらエルサが惜しみなく魔法を使うシーンもまったく見事に再現されている…と思う。実は映画を観たことがなくてね。
アナ雪ってこういうストーリーだったんだ…。
「Let it go」は映画の大団円的な曲だと思っていたんですが、そうではなかった。人を傷つけてしまう力を持ったまま、ありのままの自分で、たった一人で生きていくんだというエルサの孤独な決意の歌だった。
だけど、一人にはさせないと追いかける妹アナの存在があった。拒絶する姉と諦めない妹。言い合いの末、ヒートアップしたエルサは自分をコントロールできず、アナに心を凍らす魔法をかけてしまう。この魔法は真実の愛にしか解くことができない。
一方で、アナは閉じこもっていた城からはじめて出た時に出会った他国の王子ハンスに浮かれて、即日結婚の約束をしてしまったのだが、魔法を解いてもらうため再会したハンスはアナのことを愛しているわけではなかったことがわかり、ショックを受ける。
二人とも「真実の愛」とは何かがわからない。
結局のところ、アナの魔法はエルサが自ら解くことになる。二人が真実の愛はここにあったのだと気づくわけだ。
ハンスとアナの「おかしなこと言っていい?」の歌も、浮ついた成長前のアナの歌だったんですね。観劇後に改めて聴いてみると「雪だるまつくろう」がいちばん染み渡るなぁ。
このアナ雪、元ネタはアンデルセンの『雪の女王』だそうで。
仲睦まじく暮らしていた少年カイと少女ゲルダだが、ある日空から降ってきた悪魔の鏡の破片がカイの目と心に突き刺さり、カイは人が変わってしまったように暴力的な性格になってしまう。
そして雪の女王に魅入られ、ゲルダの元を去り、氷の城に閉じこもってパズルに熱中する日々を送る。ところが、なぜかどうしても「永遠」というワードだけを作ることができない…。
それから紆余曲折を経て助けにきたゲルダの涙がカイの心に落ちたときに、カイにかけられた悪魔の魔法は解け、「永遠」という言葉を手に二人は雪の女王の城を出る…めでたしめでたし。
2つの物語を追ってみると、『アナと雪の女王』のモチーフはアンデルセンの『雪の女王』そのままであることがよくわかる。
魔法にかかりエルサの愛によって解放されたのはアナだったが、自分を思ってくれるアナの心に触れて、エルサも憑き物が落ちた。
アンデルセンのモチーフを、よくここまで練り上げたものだ。
ところで不思議なことに、アンデルセンの物語では雪の女王をけして完全悪として描いていない。カイに呪いをかけたのは悪魔の鏡だ。
いったい雪の女王とは何者であったのか。「永遠」とは一体何を指しているのか。
よくわからないのである。
元ネタの物語がこうした曖昧さ、というか不可思議さを持つから、カイと雪の女王とゲルダの要素を合わせもったエルサとアナというキャラクターが生まれたのかな。
エルサは豹変こそしなかったけれど、近くにいたはずの姉が自分を突然拒絶するようになって、アナはすごく寂しかっただろうな。よく最後まで諦めずに追いかけたよ。
エルサもちゃんと振り向くことができて、良かったね。
ありのままの自分で生きることはひとつの強さだろう。
そして、差し伸べられた手をちゃんと掴むことも、またひとつの強さ。
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