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幻のおにぎり合宿

小学6年生の時に、おにぎり合宿というお泊まり会があった。
何せもう30年くらい前の記憶なので、覚え違いをしている場合もあるが、ご容赦願いたい。
結末は鮮烈に覚えているので間違いないと思う。

おにぎり合宿とは私のひとつ上の学年から始まったのだが、夏休みの学校に6年生が夕方から集まって、体育館に一泊して、次の日の朝に帰るというものだ。

家を出る前にお風呂に入って、お茶とおにぎりと次の日の着替えを持って、パジャマで集合とかそんな感じだったと思う。

学校にパジャマで行くという不思議な高揚感に包まれ第二回おにぎり合宿は始まった。

学校に着いてみんなでワイワイして先生からの注意を受けた後に、持参したおにぎりと、有志の保護者・6年生の担任の先生達が用意してくれたおかずで夕食を摂る。

夕食後にレクリエーションとして、学校の校舎で肝試しをやった。
こちらもお化け役は有志の保護者達。
一緒に回っていた幼なじみが恐怖で泣き喚く。
誰も居ない音楽室からピアノの音がした時は気を失いそうになっていた。
パニックになってる奴が近くに居ると頭の芯から冷静になるようで、ピアノの音が聞こえた時に「いや、準備室にもピアノあるじゃん……」と言い放つ私の可愛げの無さが妙に虚しかった。

肝試しの後は運動場で花火をした。
手持ちあり、置型あり、それはそれは盛り上がった。

寝る準備の前にみんなで歯磨きをし、体育館に雑魚寝をする。

おにぎり合宿はパーティーだ。
夜はまだまだ終わらない。
プロジェクターで体育館のステージに降ろされたスクリーンへホラー映画が投影される。
今思い出してもすごいイベントだ。

1本目の映画が終わり、2本目も怖いのが良いだの怖くないのが良いだのとワイワイ映画に移ろうとした時、物凄い音が体育館中に鳴り響いた。
ふざけて遊んでいた男子が体育館のガラス戸にパンチか何かしたらしい。
分厚いはずのガラスが割れ、男子1名は腕が大怪我である。
すぐさま救急車が呼ばれ運ばれる男子1名。
2本目の映画は流されず、先生からの状況説明と、危険行為に対する注意が促され、お通夜のように静かに皆寝始めたと記憶している。

朝7時に起き、帰宅し、朝ごはんを食べながら母に昨夜のダイジェストとして、救急車が来た事を話した。

そしておにぎり合宿は、たった2回の幻となった。

結末以外は楽しかったなぁ……と今でも思い出す、私の数少ない小学校での良い思い出である。

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